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牧野 知弘
2017/08/22

新法成立でどうなる「民泊」? 見過ごされている大問題とは

業界の反発で日本的「玉虫色」の決着となったが……

 民泊が大流行である。訪日外国人が年間で2400万人を突破し、今年もその数は伸び続け、このままだと今年は2800万人にも達する勢いだ。そんな外国人宿泊者の受け皿として注目を集めたのが民泊である。

 居住をしている家でも空いている部屋があれば、宿泊用に提供する。空き家であれば、そのまま宿泊してもらう。欧米ではごく一般的に行われている民泊だが、家をちょっと貸すだけで宿泊料が手に入るため手軽な小遣い稼ぎとして日本でも注目されるようになった。

 日本では、自分の家といえども、宿泊を「業」として繰り返し行うには旅館業法という法律に基づき許可を受けなければならない。ところがこれまではそんな法律の存在などお構いなしに民泊は勝手に拡大してきた。

 すでにアメリカの民泊仲介大手であるエアビーアンドビーなどが日本に進出して、現在では国内で5万3千室もの部屋が民泊用に登録されている。

外国人宿泊客のマナーの悪さや近隣とのトラブル……ついに新法が成立したが

 いっぽうで、都市部では分譲マンションなどで、空き住戸の所有者が民泊に活用するようになった結果、訪れた外国人宿泊者のマナーの悪さや近隣とのトラブルなどの問題が発生するなど、民泊は社会問題としても扱われるようになってきた。

 そこで2017年6月9日に成立したのが「住宅宿泊事業法(民泊新法)」である。この法律では、これまで国家戦略特区以外では認められなかった民泊を広く、住居専用地域でも認める代わりに、民泊のために住居を提供して事業を行う者、住宅を管理する者、そして民泊利用者を仲介する者に対して、事業を行うための規則を細かく厳格に適用するように求められた。実際の施行は来年1月からとなる予定である。

 国もはじめのうちは、民泊という手段を国内のホテル不足の補助機能として幅広く普及させようとしたのだが、ホテルや旅館関連団体の猛反発を受けて、徐々に後退し、結局は民泊を「普及」させるどころか「規制」するための色合いの濃い法律となった。

ホテル業界は民泊の営業日数を英国やオランダ並みに規制すべきと主張

 規制の典型が、営業日数に対する制限である。無制限に民泊が広まることを恐れた業界側は、民泊はあくまでもホテル旅館の補助機能にすぎず、年がら年中営業すべきではない、として営業日数を英国並みの年間90日、またはオランダ並みの年間60日などと同様に厳しく規制すべきだとした。

 民泊を新しい不動産ビジネスとして推進したい不動産業界は国土交通省に調整を依頼、ホテル旅館を管轄する厚生労働省との間の綱引きは、結局営業日数を年間最大180日とし、個々の自治体が個別に制定できるという、なんとも日本的な「玉虫色」の決着となった。

 ホテル旅館業界が不安視するように、「足りない、足りない」と言われ続けていたホテルも、不動産仲介サービスのCBREによれば、2017年から2020年にかけて国内の主要8都市においては新規のホテルが約6万5千室も供給されるという。東京五輪を控えた東京では今後約2万5千室もの新規供給があるから、もう宿泊施設は十分に整備されるということだ。