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連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/07/08

創業家が反対
相手を間違えた出光の“結婚”

source : 週刊文春 2016年7月14日号

genre : ビジネス, 企業

故・出光佐三氏が創業

 石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油の合併話が、揺れている。

 6月28日に開催された出光の株主総会。筆頭株主の創業家・出光家の代理人として弁護士の浜田卓二郎元衆院議員が熱弁をふるった。

「(来年4月の)出光と昭和シェルの合併に反対する。異質な企業間の合併の苦労は簡単な話ではない」

 株主総会では、月岡隆社長の再任に半分近い反対票が投じられた。このままでは合併に必要な3分の2以上の賛同を得ることは難しく、合併は破談になる可能性が高い。

「もともと大家族主義で純日本的経営の出光と、海外メジャーが母体の昭和シェルの合併には無理がある」(出光と取引のあるメガバンク幹部)

 出光OBが語る。

「かつてはタイムレコーダーがなく、2006年の上場前は定年もなかった。現在も労働組合はない。創業者である出光佐三氏以来、長年大切に守ってきた出光のよき企業文化が合併で崩れてしまいかねない。合併相手は、コスモ石油(現コスモエネルギーホールディングス)にすべきだった。コスモのドンである岡部敬一郎相談役は、以前、両社は共に民族系の石油元売りで社員を大切にする風土が似ていると語っていた。コスモなら、出光の義理人情が通じる」

 石油元売り業界は、かつて20社以上が割拠する戦国時代だったが、オイルショックなどを経て、大手5社に収斂。そこにさらに、再編の波が押し寄せていた。

「人口減や車離れ、低燃費化で、ガソリンスタンドが過当競争に陥っている。その旗を振ったのが経産省です。統合を推進する特別法を作って後押しした」(証券アナリスト)

 まず業界2位の出光が5位の昭和シェルとの合併を進め、1位のJXホールディングスと3位の東燃ゼネラル石油も統合で合意し、3社体制になるはずだった。

「出光の月岡社長は、昭和シェルを吸収合併できると踏んでいたが、『対等合併』と押し返され昨年11月、最後はのんだ。この時の弱腰が、創業家にとっては我慢ならなかった。ただ、破談の場合は、JX・東燃連合がガリバーになり、出光単独での生き残りは難しい」(同前)

 破談は新たな出会いの始まりになりそうだ。