文春オンライン

「亭主元気で留守がいい」沢口靖子、長澤まさみ、郷ひろみ…芸能界で“恐れられる”あの会社のCM

2020/06/18
note

 去る5月29日、新聞各紙に、一面まるまるを使ってこんな広告が掲載された。そこでは、「もうどう広告したらいいのかわからないので。」というキャッチコピーに続き、「日々状況が変わる毎日です。だれも、先のことはなにも想像できない2020。/この広告の掲載日に、世の中の空気はどうなっているのか、人々の気分はどんな調子なんだろうかと考えあぐねて、いろんなバリエーションを用意しました」と説明のうえ、掲載時点における状況を想定してつくられた6種の広告が、QRコードを介して見られるようになっていた(現在は金鳥のホームページで見られる)。

5月29日、新聞各紙に掲載された金鳥のゴキブリ駆除剤「ゴキブリムエンダー」の広告(金鳥ホームページより)

「なにを言ってもクレーム、炎上、袋叩き」

 想定された状況のなかには「なにを言ってもクレーム、炎上、袋叩き。広告なんてやってる場合か!の場合」というヤケクソなものもあり、リンク先を開いてみると、「なんと!自社製品の悪口だヨ。(ほら、クレームつけられない)」という挑発的なキャッチフレーズが掲げられる。ちなみにこの企画は4月中旬に決定し、5月初旬に制作されたという。緊急事態宣言の発令下で、宣言の延長も検討されていた時期だ。結果的に広告は、宣言が延長を経て全都道府県で解除された4日後に掲載されるにいたった。

「なんと!自社製品の悪口だヨ。(ほら、クレームつけられない)」金鳥ホームページより

 先行きが見えないのを逆手にとったこの企画は、金鳥のゴキブリ駆除剤「ゴキブリムエンダー」の広告だ。金鳥は今回にかぎらず、意表を突く広告で知られる。なお、勘違いされている人も案外いるかもしれないが、金鳥は企業名ではなく、大阪に本社を置く大日本除虫菊株式会社のメインブランドである。

ADVERTISEMENT

郷ひろみが「ハエ蚊退治にキンチョール。言えっ!」

 金鳥の広告は面白いと世間に周知されるきっかけとなったのは、1966年、当時人気絶頂にあったコメディグループ、クレイジーキャッツの桜井センリが出演した殺虫剤「キンチョール」のCMだろう。ここで桜井が、商品名をひっくり返して「ルーチョンキ」と言ったところ大ウケして、キンチョールの売り上げは何倍にも跳ね上がった。当時の広告の常識からすれば、商品名をひっくり返すなど言語道断で、社内の役員会でも全員から反対されたという。それをあえて押し通しての成功であった。