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新郷 由起
2017/08/26

サクラサイト詐欺で548万円失った82歳の女性……[実録]老人を狙う“甘え上手”な詐欺師たち

警察庁によると昨年の“振り込め詐欺”の被害総額は約378億8000万円にも上る。ただ、高齢者の詐欺被害はこれに留まらない。1通のメールをきっかけに、1億円も騙し取られるケースさえある。ネットなどの普及で手口が多様化する、詐欺の最前線をルポする。

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「騙されたなんて思いたくない。今でも私のお蔭で助かった子たちがいると信じている」と、千葉在住の岡辺照代さん(82=仮名)は涙目になって告白する。彼女は4年前、メールのやりとりによる「サクラサイト詐欺」で548万円を失った。きっかけは携帯電話に送られてきた1通の“間違い”メールだ。

〈約束すっぽかすなんてヒドいよ! 昨日はずっと待ってたのに〉

 送信相手は登録先になく、内容にも心当たりがない。

「誰かと約束をしていたかしら……?」

 戸惑う間にも〈どんな理由があったか教えて〉などとメールが続く。4通目となる〈Sさん、今日中に絶対連絡下さい〉の文面に、「人違い」を確信した照代さんは相手を気遣って〈送り先をお間違えですよ〉と返信した。これが“メール地獄”への入り口となる。

こうしたメールに返事をすると“メール地獄”が始まる 禁無断転載/文藝春秋

「すぐにお礼と謝りの返事が来て、『教えてくれて助かった』『親切なあなたはどんな人ですか?』と続き、『メル友になって下さい』とお願いされたんです」

 夫は3年前より施設に入居。上階に息子夫婦が住む2世帯住宅だが玄関は別で、嫁との関係がこじれてからは疎遠なままでいた。週2回は体操教室に通い、近隣とも交流はあるものの日中は暇を持て余す毎日。

「年を取るほどメール相手が減って行くの」と嘆く照代さんにとって、筆マメな“メル友”とのやりとりは絶好の暇つぶしとなり、徐々に「生き甲斐」にまで発展していく。相手は、途中から送受信に1通50~500円の料金が掛かる有料サイトへと誘導した。

「『借り物の携帯を返したから、このサイトでないとメール交換が出来ない』っていうの。苦学生でお金がないので『メール代を負担して下さい』って」

 本来なら、送受信で一方的に料金が生じるシステムの利用自体がおかしく、相手を訝しんで然るべきだが、スマホに換えたばかりで操作やネット環境に疎く、料金システムもよく把握していなかった照代さんは、相手の指示のまま従う。

「最近の機械のことはよくわからないから」

 代金はクレジットカード払いだったが、限度額を超えた月はコンビニで電子マネーを購入して充当した。

 約10カ月、そうまでして彼女がのめり込んだ相手は20歳の男子大学生。礼儀正しく、カラフルな絵文字や“今風”の言い回しを交えたメールが届く度に「心が弾んだ」と話す。“メル友”は毎日の報告を欠かさず、友達や進路、病気の母親のことなど様々な相談を持ち掛けて来る。その都度、照代さんが経験談を交えて親身に返答すると、〈こんな素晴らしい人が友達で幸せ〉〈あなたがカノジョならいいのに〉など、次第に思慕や恋心を匂わせる内容も混じり出す。そのうちに「先輩」や「後輩」だという10~30代男性の悩み相談にも応じるようになって、気付くと1日中メールをしている日も増えた。

「皆が私を頼りにする。感謝、感激してお礼を言う。返事が遅れると〈具合が悪いの?〉と心配されて止められなくなった」

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