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なぜ麻生太郎はナチスとヒトラーにこんなにこだわるのか?

──今週の珍言・重要発言総まくり

2017/09/02

小池百合子 東京都知事
「民族差別という観点というより、災害の被害、さまざまな被害によって亡くなった方々に対しての慰霊をしていくべき」

ハフィントンポスト 8月26日

 東京都の小池百合子知事が、都立横網町公園で9月1日に営まれる関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を断った。震災直後に「朝鮮人が略奪や放火をした」「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが広がる中、数多くの朝鮮人や中国人が虐殺された。朝鮮人犠牲者追悼式は、市民団体の日朝協会などが開催するもので、虐殺の犠牲となった朝鮮人らも合わせて追悼している。

 政府の中央防災会議は2009年までにまとめた報告書では、虐殺の犠牲者数を震災の全犠牲者10万5000人余のうち「1~数%」と推計している。正確な人数ははっきりしないが、犠牲者は数千人に上ると見られている(朝日新聞 8月25日)。

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 小池都知事は追悼文送付を断ったことについて、25日の定例記者会見で「(朝鮮人犠牲者に対する)特別な形での追悼文の提出は控えた」と説明。都慰霊協会が毎年春と秋に催す追悼行事で全ての犠牲者に追悼の意を表しており、朝鮮人犠牲者もそこに含める考えを繰り返した。

 会見で「虐殺の犠牲者は天災による犠牲とは違う」との主催者側の主張への考えを問われた小池都知事は「切り口は異なっているかと思うが、不幸な死を遂げた方に対する慰霊をする気持ちは変わらない」と回答。また、「民族差別が背景にあるような形で起きた不幸な悲劇について、特別にその追悼の辞を述べることについて特別な意味は見出されないのか」という質問に対しては、「民族差別という観点というよりは、災害の被害、さまざまな被害によって亡くなられた方々に対しての慰霊をしていくべき」と持論を述べた。

小池百合子都知事 ©文藝春秋

 民族差別が背景にある虐殺について問われているのに、小池都知事は「民族差別という観点というよりは」とさらりとかわし、あたかも民族差別がたいした問題ではないように語っている。さらに「虐殺」という言葉を避けて、「さまざまな被害によって亡くなられた方々」と言い換えた。また、追悼文の送付中止によって「朝鮮人が殺害された事実が否定されることに繋がるのでは」という懸念については「さまざまな歴史的な認識があろうかと思う」と述べている。この部分に小池都知事の考え方が集約されている。

 追悼式が行われる横網町公園内には朝鮮人犠牲者追悼碑があるが、今年3月の都議会一般質問で、自民党の古賀俊昭議員が碑文にある六千余名という数を「根拠が希薄」とした上で、追悼式の案内状にも「六千余名、虐殺の文言がある」と指摘した。「知事が歴史をゆがめる行為に加担することになりかねず、追悼の辞の発信を再考すべきだ」と求めた。都側はこの質疑が「方針を見直すきっかけの一つになった」と認めている(東京新聞 8月24日)。

 都知事による追悼文は1970年代から出されており、2006年以降も石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一の各都知事が出していた。昨年は小池都知事も出していたが、慣例的、事務的に送付していたことを後から知って、「今回は私自身で判断した」とも語った(産経ニュース 8月25日)。古賀議員からの指摘を受けて方針を見直し、小池都知事の判断で追悼文の送付を取りやめたということになる。

 作家の百田尚樹氏はツイッターで「これは評価できる。関東大震災の後の朝鮮人虐殺は多くの謎に満ちている」と述べ、小池都知事を支持する姿勢を示した(8月23日)。

 一方、関東大震災時の朝鮮人虐殺に関する著書があるノンフィクションライターの加藤直樹氏は「民族差別に基づく暴力に対して明確なメッセージを出さないことは、五輪開催を控える都市の長の対応として不適切。多様性を尊重する社会をめざすとする小池知事の姿勢とも矛盾する」とコメントしている(朝日新聞 8月25日)。

「ダイバーシティ(多様性)」を標榜する小池都知事がなぜこのような態度を取り続けるのかはまだわからない。本人の思想と深く結びついているのか、選挙対策なのか。今後のさまざまな行動や発言にも注目していきたい。

羽田 孜 元首相
「政治が乱暴すぎる。国民に背を向けた狂瀾怒濤政権に終止符を」

NEWS ポストセブン 8月28日

 8月28日、羽田孜元首相が老衰のため、東京都内の自宅で亡くなった。享年82。羽田氏は自民党公認で出馬した1969年の衆院選でトップ当選して以来、24年間、自民党に籍を置いた。その後、新生党党首となり、94年に非自民連立政権で首相に就任した。

 羽田氏と長く政治活動をともにした自民党の二階俊博幹事長は、羽田氏について「温厚で周囲の意見をよく聞いて対応する政治家だった。穏やかな人柄はみんなから心底敬愛されていた」と語った(産経ニュース 8月28日)。

『週刊ポスト』2017年7月21・28日号では、9人の自民党OBが古巣に苦言を述べる特集を行ったが、その中に羽田氏もメッセージを寄せている。それが上記の言葉だ。現在の政権を見ていて「政治が乱暴すぎる」とは非常に腑に落ちる。きっと対義語は「丁寧な説明」だろう。

2009年の民主党代表選の一コマ。羽田元首相の後ろには新代表となった前原氏と離党届を出した細野氏が ©文藝春秋
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