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連載THIS WEEK

近藤 甘奈
2016/03/24

北朝鮮冒険ツアー
米国人大学生に懲役15年の悲劇

source : 週刊文春 2016年3月31日号

genre : ニュース, 国際

判決後に法廷から出るウォームビア氏
Photo:Kyodo

 北朝鮮で核実験が断行される4日前の1月2日、観光を終え平壌の空港を訪れた米バージニア大学の学生オットー・ウォームビア氏(21)は身柄を拘束された。平壌市内のホテルで政治スローガンの書かれた掲示物を盗み「政府の転覆を狙う破壊活動をした」嫌疑がかけられたためだ。

 北朝鮮の最高裁は3月16日、同氏に有罪判決を下し懲役15年の労働教化刑を言い渡した。本人は涙ながらに容疑を認め、本国でポスターと引換に1万ドル相当の中古車が約束されていたと証言したが、自白が強要された可能性も捨てきれない。

 いずれにせよ北朝鮮の強制収容所では、果樹園、炭鉱、森林伐採、採石などで1日16時間にも及ぶ過酷な重労働が待ち受ける。暴力や拷問、さらに餓死など死者も多い。

 北朝鮮では15年にも韓国系カナダ人の牧師が破壊活動を行う工作員だとして逮捕され、15年の労働教化刑を言い渡されている。さらにきつい農作業に体調を崩しているとの手紙を家族に宛てたところ、刑期が無期に延びたという話もある。

 今回も重い刑に同情の声が上がる一方で「何故、わざわざ北朝鮮に」「親が渡航許可した理由は」といった声も米国内では散見される。

 ウォームビア氏が参加したのは中国のヤング・パイオニア・ツアーズという格安「冒険」旅行代理店の企画する「新年会ツアー」だった。同社のホームページには「北朝鮮は地球上で最も安全な場所の一つです」とも記されている。08年、英国人によって中国に設立された同社は北朝鮮格安旅行の草分け的存在だ。

「ツアー嫌いのあなたにピッタリのツアー会社」をモットーに今年も「金日成誕生祝賀会」や「平壌郊外の農園でワーキング・ホリデー」とバラエティに富む企画が目白押しだ。「日帰り新義州ツアー」では地元の幼稚園で「息を呑むパフォーマンスがみられます」とあり、園児がライフルで互いを撃ち合う演劇風景の写真まで掲載されている。北朝鮮のみならず、クリミアや東ティモールなど紛争地域やチェルノブイリ、南極大陸にまで手を広げている。

 だが、今回ばかりは若者の探求心の代償は、いささか高くつきすぎたようだ。米国政府の出方にも注目が集まる。

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