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宮家 邦彦
2017/09/11

「9・11」はアメリカの何を変えたのか――学校では学べない世界近現代史入門

21世紀の幕開けを告げるかのようだった「9・11」アメリカ 同時多発テロ。その後、世界はどう変わったのか――。

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 2001年、4機の旅客機がハイジャックされ、ニューヨークの世界貿易センター、アメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)などが襲われた9・11テロは、21世紀という時代の始まりを象徴するような、鮮烈なインパクトを与えました。

 このテロ事件は間違いなく、世界史を動かしたといっていい出来事でしょう。では、この9・11テロがもたらしたものとは何だったのか。ここでは現代史の流れを振り返りながら、考えてみたいと思います。

旅客機で襲われ、倒壊した世界貿易センター ©iStock.com

 現代史において決定的な年、それは言うまでもなく1945年です。第二次世界大戦が終結したこの年から、戦後世界という大きな歴史の均衡点が生まれます。

 第二次大戦前の世界、それは政治的にはファシズムやナチズムなどを含むナショナリズム、経済的にはブロック経済に象徴される「内向き」の世界でした。各国は自国の権益、言い分を守ることを最優先し、その結果、致命的な衝突を回避できず戦争に至ったのです。

 その反省から、1945年以後、世界はインターナショナリズム(国際主義)、ユニバーサリズム(普遍主義)に軸足を置こうとする時代に入っていきました。国際連合、世界銀行、IMFといった国際機関がつくられ、ヨーロッパではNATO(北大西洋条約機構)、さらにはEEC(欧州経済共同体)、EC(欧州共同体)を経てEU(欧州連合)に至る国家を超えた枠組みが形成されていく。そこには、1979年の米中国交正常化も、中東安定化を目指した1978年のキャンプデービッド合意も含まれます。

 これは同時に、米ソという二大国が拮抗する「冷戦」の時代でもありました。それが、1989年にベルリンの壁が崩壊し、1991年にはついにソ連が崩壊します。この冷戦の終わりからおよそ10年が、まさに「アメリカ一人勝ち」の時代となったのです。

 もはや民主主義、自由主義は永遠の勝利を収めた、これからはグローバリゼーションの時代で、世界はひとつになる。経済的にもディレギュレーション(規制緩和、自由化)を推し進め、効率的なマーケットがすべてを決める時代になる。フランシス・フクヤマのいう「歴史の終わり」、そしてトーマス・フリードマンのいう「フラットな世界」が実現されていくという錯覚が信じられたのが、この時代でした。

 そして、その幻想を打ち砕いたのが9・11テロだったのです。