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森岡 英樹
2017/09/12

VALU騒動の対応に金融庁が頭を悩ます理由

チャンネル登録者数は240万人(本人ツイッターより)

 1998年に旧大蔵省から分離して以来の抜本的組織改革に踏み切ることを決めた金融庁。銀行の生殺与奪を握った検査局を廃止して監督局に統合するほか、総務企画局の機能を2つに分け、総合政策局と企画市場局を新設する。そのため予算要求では、34名の定員増を求めた。

 特に企画市場局は、フィンテック室新設などフィンテック担当を7名増員し新金融技術への対応を大命題とする。

「中でもネット上で次々誕生する仮想通貨、さらには擬似株式への対応です」(金融庁関係者)

 最近では、インターネット上で個人が仮想の株式を発行して資金調達するVALUが物議を醸した。

 運営会社が、ツイッターのフォロワー数やフェイスブックの友人数などの影響度に応じて、ネット上の個人に擬似株式(VA)を割り当てる。個人は、そのVAを通じて資金調達し、投資家間の売買も可能だ。また、VAは仮想通貨のビットコインに転換し、現実の通貨に換金することもできる。

 だが、人気ユーチューバーのヒカルが、優待を示唆した後、自身のVAが高騰したところで売り抜けた“インサイダー疑惑”が世間を騒がせた。

「形態は株式に近いが、利益が配当として投資家に配分されず議決権もないため、有価証券に該当せず、金融商品取引法に抵触しない。仮想通貨を規制する法律では、4月に施行されたばかりの改正資金決済法があるが、VAは会員内での売買に限定されているため、その網にもかからない」(同前)

 新設される企画市場局の出番だが、金融庁は、森信親長官の号令一下、「金融処分庁」から「金融育成庁」への脱皮を打ち出したばかり。

「急激に規制を強めることに慎重な立場です。一方で、高齢者を狙った詐欺に近い仮想通貨ビジネスも急拡大し、マネーロンダリングや相続逃れにも使われる可能性がある。金融庁にとっては、頭の痛い問題です」(金融担当記者)

 さらに、銀行関係者はこう漏らす。

「仮想通貨や擬似株式の隆盛の背景には、リアルマネーの通貨への不信がある。特に、異次元緩和の出口が見えない日銀、そして日本円への不安が静かに広がっている」

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