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猪熊 弘子
2016/06/18

ベビーシッター事件初公判で明かされた男児陰部への執着

source : 週刊文春 2016年6月23日号

genre : ニュース, 社会

「事故」だと主張した物袋
Photo:Kyodo

 6月10日、午前9時50分過ぎ、横浜地裁404号法廷の傍聴席に入ると、すでに物袋(もって)勇治被告(28)が被告人席に座っていた。一昨年、インターネットのベビーシッター紹介サイトを通して預けられた横浜市の当時2歳の男児が、埼玉県富士見市内のマンション内で遺体で発見された「ベビーシッター事件」の初公判。

 物袋はいくつもの罪に問われている。男児の鼻と口をふさいで殺害した殺人罪、その弟にミルクや水を与えずに19時間以上放置した保護責任者遺棄致傷罪、兄弟に対するわいせつ目的誘拐罪の他、兄弟を含め男女二十数人の幼児への強制わいせつ、児童買春・ポルノ禁止法違反などだ。

 逮捕当時、坊ちゃん刈りだった髪は三分刈りになり、濃いグレーのスーツに白いワイシャツ、ブルーのネクタイをしている。俯いたその顔色は悪く、表情というものがない。裁判長から手錠を外すよう指示されて立ち上がった被告は思ったより大柄で、警官と変わらぬ背丈だった。

 証人席で名前を聞かれて答えた後、生年月日をと尋ねられた被告は「3月8日です」と答えた。裁判長は「えっと……」と小さくつぶやき、しばらく答えを待ったが返答がないので資料を確認し、「昭和63年でいいかな?」。被告は「はい」とだけ答えた。

 起訴内容が延々と読み上げられる。被告が幼い子供、特に男の子の陰部に執着し、その部分を縛るなどの暴行を加え、写真に撮るという陰湿きわまりない内容もあった。だが、物袋は表情を変えずに聞いていた。しかし、裁判長が確認すると「わいせつ目的」については頑なに否定した。

 男児の死因についても殺意を否定。弁護側の冒頭陳述では、男児は目を離した5分ほどの間に浴槽で溺れ、被告は生き返らせようとして、身体を蹴ったり、口をふさいだり、陰部に刺激を与えるなどしただけであるとした。弁護人が「事件の真相は事故です」と述べたとき、被告は席で小さくうなずいた。だが、午後には、男児の解剖を担当したベテランの解剖医が「溺死はありえない」と証言している。

 間近でみた物袋被告は、社会生活が行えるギリギリの人物という印象だった。なぜ保育の現場にこんな人物が紛れ込んでしまったのか。判決は7月20日に言い渡される。

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