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赤坂太郎
2017/09/11

「安倍三選内閣」を悩ます小池新党

悲願の憲法改正に向けて「急がば回れ」を選んだものの……

「初心に帰って謙虚に、誠実に、丁寧に全力を尽くして参ります。そう誓いました」

 8月12日、山口県長門市。首相の安倍晋三は、妻の昭恵と共に亡父・晋太郎の墓を参ると、記者団の前でこう語った。2020年の東京五輪・パラリンピックを持ち出し、長期政権への意欲を隠そうともしなかった昨年の墓参から状況は一変していた。

「仕事人内閣」と銘打ち、3日に発足した第3次安倍第3次改造内閣。だが直後の各社の世論調査は、内閣支持率が数ポイント回復したものの、おおむね不支持が支持を上回ったまま。「首相が信頼できない」という不支持理由が圧倒的に多く、「反安倍」ムードは収まる気配がない。「こんなもんでしょう」。安倍は周囲にそう強がるが、表向き神妙にならざるを得ない。

 当初、改造内閣のキャッチフレーズは「仕事師内閣」だったが、「仕事しない」と聞こえるため「仕事人」に変更した。だが早速、二階派から初入閣した沖縄北方担当相の江崎鉄磨が看板に泥を塗る。就任2日後に「お役所の原稿を読む」と語り、「やっぱり『仕事しない』閣だ」と、笑えないジョークが官邸内で飛び交った。

 墓参の3日前、安倍は東京・富ケ谷の自宅で盟友、副総理兼財務相の麻生太郎と向かい合っていた。麻生が「これから何をなさりたいですか」と問いかけると、安倍は「憲法改正です」と言い切った。改造直後の記者会見で「(改憲は)スケジュールありきではない」と、秋の臨時国会に改憲原案を提出する方針を軌道修正したばかりだったが、行程表を後ろ倒しにしただけで、改憲への意欲は衰えていないのだ。

安倍首相と、盟友・麻生副総理兼財務相 ©文藝春秋

 つまり、今回の改造の実相は「仕事人内閣」ではなく「安倍三選内閣」。安倍は改憲という悲願達成のため、「急がば回れを選んだ」(首相周辺)。手堅い布陣で経済や外交で成果を出し、支持率を回復させ、来秋の総裁選で3期目の任期を手にし、じっくり改憲に取り組む戦略に舵を切ったのだ。自民党内の改憲取りまとめ役である副総裁・高村正彦の入閣を、一時真剣に検討したことがその何よりの証左である。

 3選に向けた最大のライバルは元幹事長の石破茂だ。今回の内閣改造でとにかく石破を封じ込める――その仕掛けは巧妙だった。

 7月、安倍は麻生を通じて、石破に入閣の意向があるか否かを探った。09年、麻生政権末期に石破から退陣を要求され、「石破嫌い」を公言する麻生を使者に立てた時点で、安倍の本気度は疑わしい。案の定、石破は入閣の意思がないことを伝え、その後周囲に「もし入っても、安倍さんは自由に仕事させてくれないだろう」と漏らした。

 石破の返答を受け、安倍は即座に石破派内の入閣候補者を物色。6回生の後藤田正純ら待機組を差し置いて、まだ3回生で首相政務秘書官・今井尚哉の経産省の1期後輩、斎藤健を一本釣りした。狙いは無論、石破派の分断にある。石破派ではないが、元々石破に近い小此木八郎、梶山弘志も入閣させた。石破は「明らかに俺の手足を縛ろうとしている。ここまでやるのか」と呟くしかなかった。

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