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部谷 直亮
2017/09/09

それでもアメリカが北朝鮮を攻撃しない5つの理由

genre : ニュース, 国際

3)軍事の常識「3倍の法則」に注目

 また、北朝鮮攻撃時には、戦後の治安維持や大量破壊兵器の確保に備えて、陸軍の動員が欠かせない。だが、トランプ政権はシリアに派兵中であり、アフガニスタンには4000人もの増派を決定した。軍事には「3倍の法則」がある。つまり、派兵した戦力以外に2倍の兵力が実任務・休息・訓練のローテーションをこなす為に必要だということであり、4000人の増派は実質的に12000人の地上戦力が拘束されたことを意味する。既にアフガンやシリア・イラクに展開する戦力を含めれば、必要戦力はさらに膨らむだろう。

 そして、アフガン増派を主導し、トランプ政権の外交安保政策を取り仕切るマクマスター国家安全保障大統領補佐官は、シリアへの万単位の派兵を模索しているともいわれる。米国ではイスラム国(IS)が衰退した今こそ、シリアへの大規模派兵を行って主導権を握るべしとの論調が強い。そうなればますます北朝鮮どころではない。

©getty

4)ハリケーンの被害でそれどころではない!

 そもそも、北朝鮮と日本と米軍しかこの地上にないと考えるから問題を見誤るのだ。米大統領は、全世界及び米国内を見た上で判断を下している。まずは米国内だが、猛烈なハリケーンがトランプ大統領と共和党の強力な地盤である南部を襲い、熱烈な支持者たる市民とスポンサーたる石油ガス産業に打撃を与えた。過去にもブッシュ政権がイラクにうつつを抜かしている間に、ハリケーンが直撃して甚大な被害をこうむった結果、イラク戦争でもめげなかった熱心な支持者が離反したことを思えば、トランプが切羽詰まった状況に置かれていることは容易に想像がつくだろう。

 世界レベルで見ても、米ロ対立は高まりつつあり、北朝鮮と違って石油を産出し、米国に近いベネズエラはいつ政権が崩壊してもおかしくない。トランプ政権の中枢は中東専門家ばかりで、中東情勢は相変わらず死屍累々である。こうした状況を鑑みれば北朝鮮どころではない。

5)そもそも金正恩政権こそがよくわかっている

 そもそも、金正恩政権が今になって、核実験に踏み切ったことにこそ、米国の北朝鮮攻撃がまずないことを明瞭に示唆している。彼らはアメリカ側の内情をよくわかっている。同時に、これは米国の北朝鮮への抑止力がかなり低下していることを示唆しており、日韓は注意していく必要がある。

 以上を踏まえて、我々が懸念すべきは、米国による北朝鮮への先制攻撃ではなく、日本を蚊帳の外に置いた米朝和解である。為すべきは、生まれたての小鹿のようにおびえるのではなく、短期的には米国の海上封鎖に――平和安全法制も含めた現行法では何もできない――どのように対応できるようにするのか、そして長期的には安全保障環境を踏まえて、どのように効率的に予算を含めた資源を投入していくのか議論すべきである。一昨年は尖閣諸島、去年は南シナ海、今年は北朝鮮のミサイルと、思い付きのように対応するべきではない。

 今こそ、噂話やトランプ大統領の一部の発言をつまみ食いすることもなく、また希望的観測にすがることもない、確たる根拠に基づいた情勢分析の議論が必要だ。

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