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村瀬 秀信
2017/09/15

ゼンショー小川社長が語った「M&Aで一番重視していること」 外食チェーン「国盗り物語」最新勢力図 #2

牛丼、居酒屋、回転寿司。安く食べられるのにはワケがある

熾烈な競争が繰り広げられてきた外食チェーン業界。ファミレスが誕生した黎明期、居酒屋御三家が入れ替わったデフレ期(#1参照)に続き、牛丼、回転寿司、激安焼き鳥居酒屋など、近年の主戦場の実態に迫る(文中敬称略)。
出典:「文藝春秋」2017年9月号(全2回)

牛丼戦争の勝者―M&A期

禁無断転載/文藝春秋

 牛丼戦争。それは2000年代の外食チェーン業界における最重要事項だ。デフレ期を勝ち抜いた牛丼チェーンは、2000年代の外食シーンを牽引していく。

 長い戦いの幕開けは、2000年9月。定食やカレーなどの多様なメニューを誇り、どんなものにもみそ汁を付けるのがウリの牛丼界ナンバー2「松屋」が、300店舗達成記念として、牛めしを400円から290円に値下げしたことに端を発す。

 翌年にはダイエー系列でかつ丼や和定食を出しコアなファンを掴んでいた「神戸らんぷ亭」も牛どんを290円へ。続いて業界3位の「すき家」が牛丼を280円。そして創業100年以上を誇る業界トップ、「吉野家」は期間限定でなんと250円。さらに「なか卯」、「牛丼太郎」も追随し、2004年2月にBSE問題が起こり、牛丼が全国から消えるまで、仁義なき値下げ競争が行なわれた。

 この牛丼戦争から一歩抜きんでたのがすき家だ。すき家を運営するゼンショーは、かつて吉野家で働いていた小川賢太郎が1982年、横浜で1号店を開いた。東京大学で全共闘運動にも身を投じたことのある闘士で、目標は「世界から飢餓と貧困をなくすこと」。

ゼンショーの小川氏 ©文藝春秋

 CMで芸能人が一家を演じる「牛丼家族」そのままに、すき家は家族層へ向けたマーケティングやトッピングの豊富さ、ミニからメガまで選べる選択肢の広さ、そして牛丼再発売後にも圧倒的な低価格化を実現させ、店舗数を爆発的に増やしていく。2004年度の決算では、連結売上高でゼンショーが初めて吉野家を抜き、業界トップに立った。

 その背景にあるのが積極的なM&Aである。2000年にココス、2002年にビッグボーイ、2005年にはなか卯と、次々に他の外食チェーンを合併していく。

“牛丼ひとすじ”だった吉野家も2000年に持ち帰り寿司の「京樽」、2006年には讃岐うどんチェーン「はなまる」を吸収している。他業種でも居酒屋チェーンのコロワイドは、2012年に、焼肉の「牛角」や、近年のしゃぶしゃぶ食べ放題ブームの先駆けである「しゃぶしゃぶ温野菜」、「居酒家 土間土間」などを持つレックス・ホールディングス(現・レインズインターナショナル)を連結子会社化。2014年には、回転寿司の「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイト、2016年には出来立てのものを提供することで人気の「フレッシュネスバーガー」も傘下にしている。