文春オンライン

「空気を読む」マネジメントより「行間を読む」スキルが求められる時代に

2017/09/14
note

「真面目に働けよ」の意味合いが変わった

 いつしかライフハックのように「新しい時代のマネジメントは、旧世代の組織論の否定から入りましょう」みたいな話がどんどん出てくるようになって、昔から日本社会を支え組織の中で働いてきた人たちの常識と、いまの若い人や外国人が集まる組織での働き方とに大きな乖離を起こすようになりました。営業の仕方は一変し、組織が心がけるべきこともこれだけ変容してくると、空気を読みながら相手の要望を察知して先回りして提案したり、相手の懐に入って「面倒くさそうだけどいい奴」という信用を勝ち取り信頼に応えながら仕事を大きくしていくようなやり方もむつかしくなってきたわけです。

©iStock.com

 昔は「真面目に働けよ」と言えば、文字通り残業をいとわず成果が出るまで倒れても働く、というモーレツを指しました。そこには、確かに人材軽視でマネジメントなど存在しないかのような、若い人材を使い捨ててそれでも這い上がってくる奴が偉い、みたいな仕事の進め方があったことは間違いありません。いまは、効率を考え、段取りを組んで少ない労力で最大の成果を出せる人が「真面目」となりました。もちろん、仕事に対して集中していることは大事ですけど、私が投資先の営業会社とかにたまに見物にいくと露骨に出ているのは「同じ定時退社でも、しっかりやるべき仕事を終えてさっさと帰る人と、仕事を大量に残して帰らざるを得なくなる人」の残酷なまでの差異です。一定の働く時間しか与えられないいまの仕事環境では、一定の時間働いて成果を出せる人と、そうでない人があっさり可視化されてしまい、能力はないけど幹部各位の空気を読んだり組織の潤滑油的な愛されキャラがどんどん干されていくという悲しい現実がそこにはあります。むしろ、残業というバッファがなくなればそういう宴会を企画したり社内勉強会をやろうというような人よりも、淡々と働いて成果を出して自己研鑽に励む人のほうが評価されるようになってきます。

©iStock.com

ADVERTISEMENT

 世の中がそういう方向に変化してきている以上、空気を読む人よりも仕事のできる人が大事だという枯れた話になるんですが、いまや上司や同僚、部下からの360度評価だけでなく『Earned Value Management』のような客観的な指標で「こやつはどのくらい価値のある仕事に取り組み、実現してきたか?」というような物差しがどんどん増えてきております。昔なら「溌溂としていて、才能のありそうな若者だな。応援したろ」と思うような子でも、いざこの手のマネジメントに放り込んだら「うわ。爽やかな割にぜーんぜん成果出ないアカンやつじゃん。うちの環境に合わないかもしれないから早いとこ他の部門に出してやろう」みたいなことがどんどん起きてくる。