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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/09/27

K-POPに成りきり具合がすごい、FlowBackの暗く暴力的な音――近田春夫の考えるヒット

『WE ARE!』(FlowBack)/『フクロウの声が聞こえる』(小沢健二とSEKAI NO OWARI)

絵=安斎肇

 この男達の成りきりようといったら……。

 Music Videoに映る、その出で立ちといい表情のつけ方といい、立ち居振る舞い、発声から発音から、もう何から何まで、どうみてもアピアランスはもう韓国人のそれなのである。これまでも、日本人が韓流(kpopだねこの場合正しくは)を意識してやっているなとおぼしきパフォーマンスというものを、全く見かけなかった訳ではないが、今回はちょっとレベルが違った。これは瞠目に値する。

 資料によれば、FlowBackは五人編成のダンス&ボーカルグループで、応募総数十二万五千組を超えるオーディションを勝ち抜き、最終の八組にまで残ったというのだから、なかなかのツワモノ揃いには違いない。

WE ARE!/FlowBack(SONY)2013年結成。16年『Come A Long Way』でデビュー。本曲はHIRO、Dirty Orangeのサポートを受けている。

 メンバーがそれぞれにラップや作詞、衣装と、役割を分担しながら、基本的にはセルフプロデュースをモットーとして活躍しているとのことだったので『WE ARE!』の動画監督もひょっとして? と思い、クレジットをチェックしてみたが、さすがにそこまでは本人達も手を出してはいないようだ。

 それはともかく、彼らの国籍問題についてだが――いささかいい訳めくが――もし映像だけを観ていたのであったなら、俺ももう少しクールな反応をしていたかもしれない。

 音なのである。無論視覚から来る印象/先入観の全くなかったとはいわぬが、この曲には、jpop一般のサウンドプロデュースに通底する――一種戦略的とさえいえる――やわらかさ、優しさといったフェミニンな要素への配慮がほとんど感じられない。どころかむしろきわめて男性性の強い、暴力の匂いすら感じさせる、暗くそして刺々(とげとげ)しい音像に見事終始していて、それこそ、韓国ヒップホップ勢の十八番じゃないですか! この音じゃ俺も騙されるわ。

 あちらでは、たといアイドルものといえど、男が歌うからには“男らしさ”が当たり前に求められる。

 ひるがえって我が国においてはどうか? (男女問わず)アイドルの音楽に求められるものはといえば中性的魅力、結局“可愛らしさ”に尽きるだろう。おっと、話がそれてきた。失礼。

 いずれにせよ、今日にいたるまでのjpopの歴史のなかでも、こんなまるで“聴いてるだけでおまわりさんに捕まっちゃいそうな”ヤバい音というのはきわめて稀なことだ。では一体どんな内容の歌詞がそこに乗っているのか? 気にはなったもののほぼ九割方、何語なのかすら聴き取り不能という状況ゆえ、仕方なく歌詞カードをひろげてみた。

 すると。英語日本語入り混じりであるという以外、内容といわれても「うーむ……」。声のトーンのあまりの強面っぷりとの落差に、ゴメン! 俺思わず「カワイイよぉ~っ」て呟いちゃいましたァ(笑)。

フクロウの声が聞こえる/小沢健二とSEKAI NO OWARI(universal)『流動体について』で復活を果たした小沢が、セカオワと組んだ一曲。

 小沢健二とSEKAI NO OWARI。

 ま、こういう音になるわね。意外性はなかったです、ハイ。

今週のPR中「先日、イベントでハルヲフォン時代のメンバーで久々に演奏したんだよね。そしたらことのほか手ごたえがあってさ、ゲスト出演の一回きりのつもりだったけど、これは続けようと決意しました。新バンド名は“活躍中”」と近田春夫氏。「みんなのなかでこの名前が馴染んでくるまで頑張りたいと思いますんで、よろしくお願いします!」

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