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【楽天】エース・則本昂大とルーキー・藤平尚真の涙の違い

文春野球コラム ペナントレース2017

 9月16日、マジック1で迎えたライオンズ戦に見事勝利し、ホークスがリーグ優勝を果たした。しかも2015年に自らが作ったパ・リーグ最速優勝記録をさらに1日上回るというオマケつき。8月15日にイーグルスから首位を奪ってからは圧巻の戦いぶりで、気がつけば約1ヶ月で15ゲーム以上離されてしまった……。

 この結果からもペナントレースの完敗は認めなければならない。福岡ソフトバンクホークスが優勝なのである。しかしながら、現在パ・リーグ3位の楽天イーグルスもCSを勝ち進めば日本シリーズ進出への可能性は残されている。ならばそれに向け応援するのがファンである。ただこれから戦う上でハッキリしておきたい事もある。

エースとルーキーが流した涙

 少し前の話になるが、9月に入り心を震えさせられた涙に二度遭遇した。引き分けを挟む9連敗で迎えた9月3日、マウンドにはエース則本昂大投手の姿。この負の連鎖を止められるのは、やはりエースしかいないと僕を含めほとんどのファンはそう思っていただろう。そして蓋を開けてみれば流石の気迫のこもった素晴らしいピッチング! しかしホークスも一歩も譲らず、0−0で迎えた9回裏2死一、二塁からデスパイネ選手のサヨナラタイムリーで敗戦。今宮健太選手がホームインする瞬間、マウンドで崩れ落ちる則本投手の姿は楽天ファンのみならず多くのプロ野球ファンの心に刻まれた事だろう。

 その日のTwitterには、たくさんのホークスファンからも則本投手への称賛の声が届けられていた。19年前の、千葉ロッテマリーンズの黒木知宏投手を思い出した方もきっと多かっただろう。そしてホークスファンにとっては2006年プレーオフの日ハム戦、マウンドから動けなくなった斉藤和巳投手と重ね合わせたのかもしれない。

12年ぶりの10連敗を喫して涙を流したエース・則本昂大 ©文藝春秋

 そしてエースはその想いを8月の6連敗を止めた新人の藤平尚真投手に託した。迎えた9月5日、富山県での日ハム戦に先発した藤平投手は期待に応え、7回を被安打1に抑え、見事に連敗を10で止めたのだ。またもや連敗を止めてくれた新人投手に対し感謝の気持ちと申し訳なさでいっぱいになった。そして迎えた9月13日、ここまでライオンズ相手に8連敗を喰らっていたイーグルスのマウンドにはまたもや藤平投手が登っていた。3−1で迎えた6回に中村剛也選手に逆転スリーランを浴び、敗れてしまった。タオルで顔を覆う藤平投手を見て、なんとも言えない感情が胸をついたのと同時に、知り合いのイーグルスファンから驚きの言葉を聞いたのだ。

「こないだの則本投手に見えてきたわっ」

もちろん即答した。

「いや、それは違うでしょ」