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“ミサイル解散”で「丁寧な説明」を吹っ飛ばした安倍首相

「ロケットマン」と永田町の今週の暴言・重要発言総ざらい

2017/09/23
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ドナルド・トランプ 米大統領
「米国自身、もしくは米国の同盟国を守る必要に迫られた場合、北朝鮮を完全に破壊する以外の選択肢はなくなる」

ロイター 9月20日

 トランプ米大統領は19日、ニューヨークの国連本部で就任後初の一般討論演説を行った。トランプ氏は演説の中でイランの核問題、ベネズエラの民主主義をめぐる問題、イスラム強硬派などについても言及。キューバ政府も批判した。

 なかでも鋭い矛先を向けたのが北朝鮮だ。トランプ氏は、米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなる可能性があると述べ、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と揶揄した。

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 トランプ氏は北朝鮮をイラン、ベネズエラと並んで「ならず者国家」と呼び、「向こう見ずで下劣だ」と強く批判。さらに「日本の13歳の少女が自国の海岸から誘拐され、北朝鮮スパイに語学を教えることを強いられた」と拉致被害者の横田めぐみさんにも触れ、北朝鮮の体制が世界の脅威であることを強調した(朝日新聞デジタル 9月20日)。安倍首相は「ドナルドにお礼申し上げたい」とコメントしている(FNNニュース 9月22日)。

「核紛争の危険をおかす国と貿易を続けるだけでなく、武器供給や財政的な支援をする国があるのは許せない」と強調。国際社会に連携を訴えることで、北朝鮮への制裁の抜け穴をふさぎ、圧力を増す狙いがある。なお、21日には北朝鮮に対する制裁措置の強化を可能にする大統領令に署名した(ロイター 9月22日)。

金正恩 北朝鮮・朝鮮労働党委員長
「米国の老いぼれの狂人を必ず火で罰するであろう」

産経ニュース 9月22日

 トランプ米大統領の国連総会での演説を受けて、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は激烈な非難の声明を発表した。金正恩氏直々の声明が発表されるのは今回が初めて。言葉の内容も含めて、ギアが一段上がったようだ。

中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察する金正恩朝鮮労働党委員長  ©共同通信社

 金氏はトランプ大統領の演説を「歴代最も暴悪な宣戦布告であり、史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と批判。「トランプが何を考えようが、それ以上の結果を目の当たりにすることになろう」「米国の老いぼれの狂人を必ず火で罰するであろう」などと痛罵した。トランプ氏の「完全破壊」というフレーズにも強く反応しており、「米国執権者は情勢緩和に役立つ説得力のある発言をするどころか、わが国家の『完全破壊』という歴代米国大統領いずれからも聞いたことのない前代未聞の無知蒙昧な狂った妄言を吹きまくった」と主張している。

 また、声明には「トランプが楽しむ修辞的な表現ではない」「トランプが我々のどの程度の反発まで予想し、怪異な言葉を使ったのか深く考えている」「トランプが考えていた、それ以上の結果をみることになる」と、トランプ氏の名前が再三登場する(朝日新聞デジタル 9月22日)。金氏がトランプ氏の挑発を強く意識しているのは明らかだ。

 産経は「米朝関係は首脳同士が名指しや蔑称で罵り合うという最悪の状況になった」と指摘している。

 国連のグテレス事務総長は各国首脳に対し、「無意識下での」戦争突入を避けるよう呼びかけているが(ロイター 9月22日)、核兵器を持つ者同士であるトランプ氏と金氏の世界を巻き込んだチキンレースはまだ続きそうだ。

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