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鳥嶋 真也
2017/09/26

ノーベル賞受賞 「アインシュタインの宿題」を解いたキップ・ソーンとは何者か?

あのホーキングにも「勝った」男

 今年のノーベル物理学賞は、世界で初めて「重力波」を検出した3氏に受賞が決定した。なかでもユニークなのがキップ・ソーン氏、77歳。あのホーキング博士に賭けで勝って『ペントハウス』1年分をゲットした変わり者、一体どんな人? 重力波って何? (この記事は9月26日に公開されたものです)

アインシュタイン最後の宿題「重力波」とは?

 重力波というのは、ブラックホールのような大きな質量をもつものが、ある特定の運動をする(たとえば2つのブラックホールが合体するなど)ことで、時間と空間(時空)が歪む現象のこと。「時空のさざ波」とも例えられる。

 重力波の存在は、1916年に物理学者のアルベルト・アインシュタインが研究の中で予言した。その後、多くの科学者が重力波を発見しようと努力したものの、長らく実ることはなく、「アインシュタイン最後の宿題」とまで呼ばれていた。

アインシュタイン ©getty

 しかし2015年9月14日、米国のカリフォルニア工科大学とマサチューセッツ工科大学などからなる国際研究チームが発見に成功。アインシュタインの予言から100年後にして、人類はついに宿題の提出を終えたのである。

 発見に成功した秘密は、新たに開発された「LIGO」(ライゴ)という名前の重力波望遠鏡にある。望遠鏡といっても、重力波は直接目には見えないため、装置の中にレーザー光を飛ばして、重力波によってそのレーザーが飛ぶ距離が変化する様子を検出することで重力波を捉える、という仕組みをしている。

 仕組みだけ聞くと単純にも思えるが、しかし、重力波の波の大きさは、地球と太陽との間の距離が水素原子1つ分変化するだけという、ごくごく小さなものでしかない。だから、たとえば望遠鏡のそばを人が通っただけでも、その振動で結果が変わってしまう。そうした振動を極力なくして重力波だけを検出するため、LIGOの建設には多くの最新技術が投じられた。

 アインシュタイン最後の宿題を解いたこと、装置の開発などの苦闘があったことから、重力波の発見は「ノーベル賞級の大きな成果」といわれているのである。

重力波を発見した重力波望遠鏡「LIGO」 ©LIGO Laboratory/NSF