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楠木 建
2017/09/26

ショートケーキ「イチゴ最後派」の心理と論理

楠木建の「好き」と「嫌い」  好き:最後にイチゴ  嫌い:最初にイチゴ

「ショートケーキのイチゴは先か後か」問題

 あくまでも個人的な好き嫌いの話として聞いていただきたい。

 ショートケーキを食べるとき、最初にイチゴを食べるか、最後に食べるか。ときどき周囲の人にこの質問をしてみるのだが、僕の経験では、「最初にイチゴ」という人が多い。

 実際のところどうなっているのかと思って、ネットで調べてみた。今の時代、この手の情報のほとんどは、ちょいと検索してみればすぐに出てくるので便利ですね(言い換えれば、ネットでインスタントに得られる情報や知識はその程度のものしかない)。

 で、ありました。「何でも調査団」というサイト(chosa.nifty.com)に「ショートケーキのイチゴは先か後か」についてのアンケート調査の結果が出ていた。2012年と少し古い調査なのだが、回答者数は3784人と十分。調査の時点によって回答が影響を受けるということもなさそうなので、この調査結果が日本の大勢を示しているといっていいだろう。どうでもいい話だが。

©iStock.com

 で、結果は僕の予想通りだった。調査結果の報告は男性と女性に分かれていて、男性では「最初にイチゴ」が50%、「最後にイチゴ」が11%、女性では順に38%と13%になっている。いずれもあわせて100%にならないのは、「スポンジ部分が半分ぐらいになった途中で」という第3の選択肢があるからで、これが男性では34%、女性では44%を占める。「途中派」がけっこう多いのは意外だったが、「最後派」は男女ともに10人に1人強しかいないマイノリティーであるのには変わりはない。

「たい焼きはアタマから食べるか、尻尾から食べるか」という、これまたどうでもいい調査結果が同じところに載っていた。それによると、「アタマ派」が72%、「尻尾派」が21%。面白いのは、たい焼きでもちゃんと中道をいく人がいて、「胴体から食べる」が5%となっている(いずれでもない人が2%いるということになるが、この人たちはどうやって食べるのかな)。

 ようするに、ショートケーキにしてもたい焼きにしても、「美味しいところから先に……」というのが世の中の多数派だということだ。

 この点、僕ははっきりと少数派に属する。ショートケーキについては断然「イチゴ最後派」である。たい焼きも尻尾から食べる。美味しいところというかメインイベントを最後までとっておく。最初にスポンジを食べてしまい、最後に意図的に残した少しのスポンジケーキおよびクリームと一緒にイチゴを口に入れる。たい焼きにしても、尻尾の餡子フリーなところから始め、最後に餡子たっぷりの頭部を一口で食べる。そういうときに、わりと強い悦びを感じる。

 先日、仕事先で会った人々とこの話題になったとき、「僕は断然、スポンジが先でイチゴは後ですね」という人がいた。同類発見と喜んだのだが、その理由は「僕はスポンジケーキの生クリームが大スキなんですよ。イチゴは別にスキではないので後回し」というものだった。表面的現象としては僕と同じなのだが、この人の悦びのツボは僕と反対のところにあるのであった。