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五味 洋治
2017/10/03

トランプと大舌戦 金正恩の声明から読み取れるもの

声明を伝える平壌駅前のスクリーン ©共同通信社

〈トランプは、一国の武力を握った最高統帥権者として非適格であり、彼は明らかに政治家ではなく、火遊びを好むならず者、ゴロツキだ〉

 9月22日付の北朝鮮労働党機関紙「労働新聞」に掲載された金正恩党委員長の過激な「声明」が世界的に話題となっている。

 声明はトランプ米大統領が19日、国連総会で行った演説で、正恩氏を「ロケットマン」と皮肉り、「(必要なときは)北朝鮮を完全に破壊する」と刺激したことへの反発として出されたものだ。

 見かねたロシアのラブロフ外相は「幼稚園でのけんか」と例え、「頭を冷やし、接触を試みよ」と呼びかけたが、声明をよく読むと、金正恩の人間像がうかがえる。

 まず異例なのは、最高指導者が直接声明を出した点だ。北朝鮮が公式な立場を表明する場合、外務省や労働党の外郭団体の名前を使うのが普通で、今回のようなケースは「過去に例がない」(韓国統一省)という。

 さらに目をひくのは、次のような部分だ。

〈(国連は)世界最大の公式な外交舞台だけに、米大統領ともあろうものが、執務室の即興的放言とは違う発言をすると予想していた〉

 国際外交における国連の重みを論じてから、米大統領にあるまじき立ち居振る舞いを諫めるあたり、なかなかロジカルだ。“即興的放言”とは、トランプ大統領のツイッターでの発言を指しているのだろう。さらにこう続く。

〈私は今日、米大統領選挙当時、トランプに関して「政治門外漢」「政治異端児」などと嘲弄されていた言葉を再び想起することになる〉

 正恩氏は、国際ニュースをネットで見ているとされているが、トランプ氏の発言が政治的混乱を招いている状況をよく把握しているようだ。

 また、米国に対して〈超強硬措置〉を〈慎重に検討する〉というあたりにも、自身の発言のインパクトに配慮する冷静さも垣間見える。

 一方のトランプ氏は、その後も自身のツイッターで「チビのロケットマン」とやり返したが、米国内では、この時期に、あえて刺激的な演説をした不用意さに批判が集まっている。いずれにしろ、この対決が「言葉の爆撃戦」だけにとどまる保証はない。

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