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鼠入 昌史
2017/10/02

執念の“10時打ち”「ネットじゃどうにもならない世界がある」

 そして、時刻表とにらめっこで作られた行程に基づいて列車や宿の予約を担当するのは部長たる阿部くんのお役目だとか。これが意外と大変な作業。青森の日本海側を行く五能線「リゾートしらかみ」のような人気列車の予約はどうやって?

「10時打ちです!」(阿部くん&白倉くん)

 ……10時打ち?

「指定席券が発売されるのは運行日の1ヶ月前の10時。その10時ちょうどにみどりの窓口できっぷを買うことを10時打ちと言います。ただ、平日だと学校があるので窓口に並べない。だから事前予約を受け付けてくれる窓口を地道に歩き回って探して、なんとかきっぷを確保しています」(阿部くん)

手作りグッズも展示

 事前予約受付をする駅はネットでは公開されていない情報なのだ。ちなみにきっぷ予約にはえきねっとなどのネットを活用する方法もあるが、クレジットカードが必須なので高校生である彼らは使えない。

「ネットじゃどうにもならない世界がある。それがまた、面白いんですよね」(阿部くん)

 こんな発言が高校生から聞けるあたり、さすが開成鉄研部である。

今年の「部誌」。特集は「優等列車」だが、阿部くんが寄稿しているのは貨物論

鉄道の世界に没頭するわけでもない“開成らしさ”

 そんなわけで、駆け足で見てきた開成鉄研部の文化祭展示。最後に、阿部くんと白倉くんに鉄道ファンになった経緯を教えてもらった。

「おじさんが鉄道ファンで、子どもの頃にいろいろ連れて行ってもらっていたんです。でも一時期父親の仕事の都合で海外ぐらしで、しばらく鉄道から離れてたんです。でも、日本に戻ってきたら、子どもの頃によく乗っていた車両がみんな置き換わっていてびっくりして……。それでいつの間にかハマってました」(阿部くん)

「家の隣に線路があったんです。だから毎日毎日走る電車の音を聞き、見ているうちに好きになっちゃった」(白倉くん)

もちろん鉄道写真もたくさん展示

 貨物大好き阿部くんは、もっぱら撮り鉄に勤しみ、暇さえあれば沿線にカッコイイ鉄道写真の撮影に出かけているとか。その際に撮影したプロ顔負けの写真も展示されていた。白倉くんは「自分はナントカ鉄というのは特になくて……オールマイティーです!」とのこと。

 開成高校の鉄研では、高2の文化祭をもって部活から引退するのが習わし。その後は受験勉強?

「いや、高3春に運動会があるのでそこまではそれに専念します。僕は運動会のパンフレット編集担当もやっているので。受験勉強はそれが終わってからですね」(阿部くん)

 深遠なる鉄道の世界に没頭するわけでもなく、時には10時打ち、時には観光旅行を楽しみながら高校生活を謳歌して、開成鉄研部員たちは今日も「テツの道」を究めていくのである。

初乗り60円時代の東上線ボードを持って

写真=鼠入昌史