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連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/12/02

農協改革大荒れの影に秘密主義者
奥原農水次官

source : 週刊文春 2016年12月8日号

genre : ニュース, 政治

麻布高-東大法卒の奥原氏
Photo:Kyodo

 11月11日、農協改革が大荒れとなる“爆弾”が投下された。

 政府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループ(WG)が公表した「農協改革に関する意見」がそれだ。

「過激な内容に、農業団体、農林族議員は大騒ぎとなりました。これまでWGでも議論されていなかった内容が唐突に盛り込まれていたからです」(農政担当記者)

 JA全農は1年以内に共同購入の窓口に徹する組織に転換すべき、などの内容に、18日に開催された公明党の農林水産部会は荒れ、次のような叱責が農水省幹部に飛んだ。

「この紙はWGの金丸恭文座長(フューチャーアーキテクト会長)が11日に急に出したとの話がある」

 というのは、「原案は誰が作ったのか、WGの委員にこれだけ農協に精通した内容を書けるとは思えない」(自民党議員)との疑念からだ。

 関係者によれば、この原案を金丸座長に振り付けたのは、農水省の奥原正明事務次官だという。1979年入省の奥原氏は、経営局長時代に農地中間管理機構(農地バンク)の創設や、JA全中を頂点とする農協制度の60年ぶりの抜本改革を実現させた農水省きっての農協解体派だ。一方で敵も多く、「なんでも自分一人で進める秘密主義者。また職員の細かい動向まで把握している。相手によって話の内容を変えるが、自分が言ったことをよく逐一覚えていられるものだ」(農水省関係者)と毀誉褒貶(きよほうへん)ある人物だ。

 昨年、同期入省の本川一善氏が事務次官に就いた時には、次官の目はなくなったとの見方がもっぱらだったが、異色官僚を好む菅義偉官房長官の後押しがあり、今年6月、異例の同期次官誕生となった。

「農業が産業化し、農水省が要らなくなることが理想だ」と公言して憚(はばか)らず「経産省の人」(前出・農水省関係者)と言われる奥原氏。

「彼は、農協は解体してもいい、少なくとも協同組織の農協を株式会社化させ、金融部門は分離し、金融庁に移管すべきと考えている」(同前)

 その一の矢が今回のWGの提言だったわけだ。農林族議員の抵抗を受け、あくまで農協が自主的に行うものとなった農協改革。だが、奥原氏は残り任期内でのリベンジを虎視眈々と狙っているという。