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連載THIS WEEK

名越 健郎
2016/12/24

領土問題解決の切り札になるか
プーチンの忠犬

source : 週刊文春 2016年12月29日号

genre : ニュース, 政治, 国際

日本の取材陣に吠える一幕も
Photo:SPUTNIK/Jiji

 プーチン・ロシア大統領の訪日(15~16日)で、日露友好の「陰の主役」となったのは、秋田犬だった。

 まず訪日直前に行われた読売新聞・日本テレビとの会見。プーチン大統領は佐竹敬久秋田県知事から4年前贈られた雌の秋田犬「ゆめ」を連れて現れ、「厳格な犬だ。番犬のような役割を果たしている。いつも私を守ってくれる」とご満悦だった。

「ゆめ」が公の場に姿を見せたのは、14年2月にソチの公邸で安倍晋三首相を出迎えて以来。大きく成長し、すっかり大統領の“忠犬”になった印象を与えた。

 ロシア紙コムソモリスカヤ・プラウダ(16日付)によると、大統領が餌付けする様子がネットで拡散すると、ロシアの愛犬家の心をわしづかみにし、「大統領と同じ犬を」と人気が沸騰した。

 ペットショップは「ゆめと同じ毛色の秋田犬売ります」などと宣伝し、愛犬家の問い合わせが殺到しているという。価格は1頭8万ルーブル(約15万円)に高騰した。寒さに強く、忠誠心が売りの秋田犬はロシアの愛犬家の心をとらえたようだ。

 長門市の温泉旅館での夕食会では、プーチン大統領が安倍政権の長期化を祈って乾杯の音頭を取った。安倍首相が内閣不信任案が否決されたことに触れると、大統領は「もし、またそういうことがあれば、私が『ゆめ』を連れてくる」と述べ、盛り上がったという。

 共同記者会見でも、大統領は冒頭、長門市住民の温かい歓迎に謝意を述べ、「1人の女性が沿道で秋田犬を抱いて車列を出迎えてくれた。とても気持ち良かった。この女性が聞いていれば、彼女にアドバイスしたい。秋田犬は外見はかわいくても、真剣な犬だ。常に尊敬の念を持って当たらねばならない」。

 大統領が「ゆめ」と触れ合うたびに、日本を意識する効果があり、「ゆめ」が領土問題解決に微妙な役割を果たすかもしれない。

 ただし、“「ゆめ」のお婿さん犬を進呈したい”との秋田犬保存会の提案を、大統領府は「今回は見送りたい」と断った。歯舞・色丹の二島返還にも慎重だったが、二島と二頭の「等価交換」には応じられないということのようだ。

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