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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/10/11

Block B PROJECT-1に見る、日本語ヒップホップの難しさ――近田春夫の考えるヒット

『WINNER feat. ちゃんみな』(Block B PROJECT-1)/『HONEYMOON』(B.A.P)

絵=安斎肇

 かつて……。

 こんな私にもラッパーを生業にしていた時代があったのだよ。この連載の始まる前の話だから、もうかれこれ二十年以上は昔になるだろうか。

 Block B PROJECT-1の『WINNER feat. ちゃんみな』を聴いているうち、ふとその頃のことが走馬灯のようにアタマをよぎってしまい、柄にもなく感傷に耽っていた。あ、ウソウソ。全然よぎってないっす耽ってないす(笑)。スンマヘン、最近寄る年波なせいかついついもっともらしい雰囲気醸し出すのにハマっちゃってて。あんまり調子にのってやってると本気に思われちゃうわ。おふざけもほどほどにしときますね。

WINNER feat. ちゃんみな/Block B PROJECT-1(キングレコード)韓国の人気7人グループBlock Bから5人を招いての日本限定コラボ企画。

 それはともかく、日本語とラップの関係について俺も興味がまったく失せてしまった訳ではないよ。コレはホント。そりゃ今だって気にはなる。

 さて。今回のCDでも聴かれるのが“トラップ”と呼ばれるスタイルのサウンドだ。ここ数年のヒップホップの業界では、これが一種トレンドになっているといってもいい。

 Perfumeの新曲を取り上げた際にチラリと触れた“フューチャーベース”ともどこか似通った感触を持つ――誤解を恐れずにいえば――EDM的サウンドメイク術を取り入れた“打ち込みスキルの披露に余念のない”凝った音響が売りのヒップホップである。

 といっても、曲調に関しては、EDMというよりはむしろレゲエ寄りの、ビートを倍のテンポにすることも可能な、ゆったりしたものが基本だ。

 ヒップホップや四つ打ちのダンス、いやいやポップス全般といっていいかもしれぬが、新しき音色と共に、流行を牽引することになる大切な要素が、“新しきB.P.M.の登場”であると俺は考えている。

 そうした意味で、Block B PROJECT-1の今回のトラックの速度感は、正に今の時代ならではのものなので、一度検索でもして確認してみていただければ。なるほどという感じにはなると思う。

 ただこの手の“トラップ”のテンポというのは――英語なんかとは違い――一音節で意味の成立することのほとんどない日本語のような言語でラップをやるには、たとえば32分音符を入れるなりして、限られた時間内でのコトバによる情報量を増やす方策を取るといった工夫をしないことには、間が抜けてしまうというか、様になりにくいテンポなことも事実である。そのあたりの工夫はこの曲でも色々となされているようだが……。

 いずれにせよ、なんで若いヒップホップ業界人、もっと普通に日本語で楽に自在に表現の出来るテンポってのを打ち出してこないのだろう?

 韓国語の場合、そうした問題、つまり無理して英語向きなビートにコトバを乗せるみたいなことに対する苦労不便はあるのかどうか? 不勉強にてなんとも判断のつかぬ俺だが、この人たちにそこは是非尋ねてみたいものである。

HONEYMOON/B.A.P(キングレコード)韓国の6人組アイドルグループ。日韓同月リリース、日本では8枚目のシングルとなる。

 B.A.P。

 発見! 韓国の歌手って爽やかなサウンドに向いてない。

今週のエウレカ「米朝が緊迫しているけどさ、オレは戦争にはなるまいと睨んでいるね。まさにこれ“ゼノンのパラドックス”の矢と的の関係よ。飛んでいる矢が的にどんなに近づいても、つねに矢は的との中間地点で静止して、決して的には届かない。物理的には詭弁に過ぎないけど」と近田春夫氏。「キムとトランプの舌戦では、十分に可能なんだなぁ」

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