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「職場での旧姓使用は認めない」
女性教諭への判決に非難集中

source : 週刊文春 2016年10月27日号

genre : ニュース, 社会, 働き方

判決後に記者会見する原告側弁護士ら
Photo:Kyodo

「職場で戸籍姓の使用を求めることには合理性、必要性がある」

 日大三中・高(東京都町田市)の30代女性教諭が学校法人に職場での旧姓使用を求めた訴訟で11日、東京地裁は訴えを棄却した。その判決内容が「社会に逆行している」と非難が集中している。

 そもそも、なぜ職場を訴える事態にまで発展したのか。

 司法担当記者が解説する。

「女性教諭は2013年に結婚後、戸籍上は夫の姓になりましたが、学校側に旧姓を使い続けるよう要望しました。彼女には参考書の著作もあり、『自分の実績と名前が切り離されてしまう』と姓を変えることに強い抵抗感があったようです。ところが学校側は『公人である教職員の業務には、法に基づいた呼称が妥当だ』として改姓届を出すよう回答。調停も不調に終わり、教諭は時間割表や成績通知票などで旧姓を使えるよう昨年提訴しました」

 旧姓使用の範囲は拡大している。国家公務員では01年に省庁間の申し合わせで認められ、地方自治体や民間企業にも広がった。公立学校教員は学校や教育委員会の裁量で認められる場合が多い。この教諭はやむなく改姓届を出したが、大半の同僚や生徒は旧姓で呼び続けているという。

「弁護団は『管理職の考えは偏っており、一種のパワハラだ』と主張しています」(同前)

 だが、司法の判断は違った。

「学校側は『戸籍姓と通称を区別して管理すると煩雑さが伴い、取り違えが生じる可能性がある』と主張しましたが、判決はこれを認めた形。しかし、記者の間でも『通称使用で職場が混乱するなんて聞いたことがない』という声が相次ぎました」(同前)

 朝日新聞は天声人語欄や社説で「あまりに時代錯誤だ」(13日)と批判。裁判官が男性3人だった点にも「姓を変える女性の不利益が分かっていない」との声が上がった。

 元裁判官の弁護士が言う。

「『戸籍姓を名乗りなさい』という指示が違法とまでは言いにくく、判決はやむを得ない面があります。ただ、最高裁大法廷は昨年12月、民法の夫婦同姓規定を合憲とした根拠の一つとして『通称使用が広まり、女性が姓を変える不利益は一定程度は緩和され得る』と指摘した。今回の地裁判決はこれに矛盾します」

 教諭側は控訴する方針だ。