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津田 大介
2017/10/12

フェイクニュース時代に求められる「情報」との向き合い方

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一押しニュース

▼〈『嫌韓』『反日』の記事を書けば800円。政治系ブログ作成の求人が掲載中止に〉9月22日、BuzzFeed News(筆者=籏智広太)

 ツイッターからブログまで、ネットを開くと保守系の情報が日常的に目に入ってくるようになった。ネット人であれば誰しも一度くらいは見たことがあるだろう。だが、それらは「業者」が組織的に作っているものだとしたらあなたは何を思うだろうか。

 9月22日、ネットメディア「バズフィード」に掲載された「『嫌韓』『反日』の記事を書けば800円。政治系ブログ作成の求人が掲載中止に」という記事では、ネットを介して個人や企業の橋渡しを行い仕事の受発注を行うクラウドソーシングサービス上で「政治系の記事作成」の求人募集が掲載されていたことが報じられている。募集要項によれば、1800~4000字のブログ記事を1つ書くと800円の報酬が得られるという。執筆する記事に盛り込む主張として「憲法9条を改正し、軍隊を保有」「韓国とは付き合うべきではない」「民進党の政策と反対のことを行えば日本は良くなる」といった例が挙げられていた。

バズフィードの当該記事

 同サービス上では過去に「保守(反民進・嫌韓)系まとめブログサイトの運営管理」という別の仕事依頼も掲載されており、募集要項には細かく仕事のやり方が記載されていた。(1)保守寄りな人に受けそうなニュース・話題を探してくる(嫌韓・嫌中・反民進・反日などのニュース・記事)、(2)キャッチーなタイトルを考える、(3)ニュース記事を引用スタイルでブログに貼り付ける、(4)そのニュースに反応のあるツイッターのつぶやきを埋め込む――といった流れだ。匿名掲示板の書き込みを記事のように見せる「まとめブログ」は、若者を中心に絶大な影響力を持っている。こちらの記事単価は一記事あたり50円。記事を作るライター側は、大量に記事を生産しないと割に合わない構造になっている。この募集内容が9月21日にツイッター上で話題になり、同日サービスを運営するクラウドワークス社は「利用規約および仕事依頼ガイドラインに反する」としてこれら募集の掲載と閲覧を中止した。

 このように、特定の思想を拡散するために「業者」を使ってフェイクニュース記事を大量に生産し、拡散する事例は既に海外で問題になっている。6月13日にセキュリティ企業のトレンドマイクロが発表したレポート「The Fake News Machine」によれば、中国やロシアのコンテンツマーケティング企業に依頼することで、フェイクニュース記事を作ったり、動画をユーチューブに投稿したり、それらに数千の「いいね!」を付けたり、ツイッターやフェイスブックでシェアさせたりすることが可能になるという。

津田大介氏 ©共同通信社

 昨年の米大統領選では欧州の小国マケドニアにあるヴェレスという街の若者がアクセスを集めて広告費を稼ぐ目的でトランプ候補を支持し、クリントン候補を攻撃するフェイクニュースブログを大量作成。それらの記事がフェイスブックやグーグルで拡散することで多くの有権者が閲覧し、選挙結果に少なからぬ影響を与えたと言われている(彼らの内、1人は総計700万円稼いだという)。このことで大きな批判を浴びたフェイスブックやグーグルは現在フェイクニュースを流すアカウントの凍結を積極的に行っているが、フェイクニュースを流す側も様々な抜け道を駆使するため、完全な排除はできていない。

 政治的、あるいは経済的な目的で歪められた情報にネットが埋め尽くされる。スマホやソーシャルメディアの台頭で、この構造がここ数年で確立されてしまった。タダより高いものはない――我々消費者は、今一度このことを肝に銘じて「情報」と向き合う必要がある。

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