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生者と死者が交錯する25年ぶりのドラマ「ツイン・ピークス The Return」

生者と死者が交錯する25年ぶりのドラマ「ツイン・ピークス The Return」

2017/10/08
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旧作を見ている者でもありえない不条理ぶり

「The Return」は説明台詞を素直に受けとめれば、シュールな状況の明瞭な解説を語っていたりするので、言葉への注意は必要。それとエンドクレジットで役名を確認すると、腑に落ちたりします。まあそもそも、「人物の動作がなんだかカクカクする紫色の部屋から、女が外に出て宇宙に飛んでいく」とか、そんな場面は旧作を見ている者でもありえない不条理ぶりなので、謎の世界へ踏み込む妖しさを楽しんでください。

“TWIN PEAKS”: ©Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

 一応基本の説明をしておくと、メインとなるキャラは旧シリーズに引き続き、カイル・マクラクラン演じるデイル・クーパーです。ただ、旧シリーズの最後でクーパーは、異空間=悪の世界である「ブラックロッジ」と呼ばれる場所から出られなくなってしまいました。その時、クーパーにはドッペルゲンガーも誕生しています。ここまで読んで引いてる方もいるかもしれませんが、観れば意味がわかります。「The Return」は前作のそんな終わりから引き続く、ツイン・ピークスの住人や、ローラ殺害事件やブラックロッジに関わった人々の、25年後のいまを描く群像劇となっています。登場する俳優、総勢217名。「The Return」は新たな出演者たちのエピソードもかなり多いですし、続き物ではあるので1話目から順番に見るのは大事ですが、大量に挟まれたコミカルなシークエンスをぜひ観てほしいです。

生者と死者が交錯する「The Return」はまるでレッドルーム

“TWIN PEAKS”: ©Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

 旧シリーズと比べて格段に洗練された手際と、シーンごとの密度の高さ、絵画を捉えるような絶妙な構図の連続は、25年という歳月の賜物だと思います。毎週1時間のドラマにおいては、異質といえる長回しのカットも贅沢な作り。新たに加わった豪華な俳優陣も、今だから出来た絶好のタイミングでしょう。ただし長い時間は、旧シリーズの俳優の死去を避けられません。撮影は2015年から始まっていたので、亡くなった俳優も撮影は済ませていたり、アーカイヴからの利用に同意を残していたりしたため、今年の新作なのに、今はいない人たちが大勢画面に登場する作品となっています。生者と死者が交錯するこのドラマは、まさにクーパーが囚われている、時間が混在するレッドルームのようですね。

INFORMATION

「ツイン・ピークス The Return」
今冬全話一挙放送! WOWOWプライムにて好評放送中(全18話)。毎週土曜夜9:00〔2カ国語版〕/毎週金曜夜11:00〔字幕版〕(全18話)
http://www.wowow.co.jp/drama/tp2017/

生者と死者が交錯する25年ぶりのドラマ「ツイン・ピークス The Return」

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