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【巨人】「28歳、元盗塁王」が戦力外通告、東京ドームで藤村大介に見た夢

文春野球コラム ペナントレース2017

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即戦力を求められる28歳のリアル

 順調すぎた前半5年間と、苦悩の後半5年間。最近はチーム内にも藤村と同じ左打ち俊足タイプの野手は立岡宗一郎、重信慎之介、吉川尚輝と年下選手が増えていた。プロ野球選手もサラリーマンもOLさんも、28歳は老け込む歳ではないが、若さを売りにできる年齢でもない。残念ながら、失敗しても育成だからと許してもらえる時期は過ぎちまった。そう言えば、もう10年近く前、俺も「28歳の転職活動」経験がある。新卒時の面接では「なんでもできます!」なんつってヤル気と元気アピールしていればなんとかなったのに、20代後半にもなると「これまで何をしてきたか?」「ウチに入って何ができるのか?」的なオヤジたちのシビアな目線に晒されるリアル。藤村の今後の進路は(他球団移籍から育成再契約まで)まだ未定だが、ユニフォームを着続ける限り常に即戦力を求められることだろう。

 1軍でデビューした頃、藤村はスコアボードに高橋由伸や阿部慎之助と一緒に自分の名前が並んでいて、スーパースターと同じグラウンドで野球していることに身震いする。スポーツニュースで超満員の東京ドームのど真ん中で打席に立っている自分を見ると、こんな凄いところでやってんだなあ……とも感じたという。そんな夢の中にいた巨人10年間。けど、いつまでも夢見る少年じゃいられない。だって、28歳の大人だから。今季はイースタン104試合(248打席)で打率.281を残し、10盗塁と自慢の足もまだ錆び付いちゃいない。まだできる。個人的にはそう思う。

 7日のファーム日本選手権、涙を流しながら最後の打席に入り三ゴロに終わった松本哲也を、ベンチの若手が「お疲れさまでした」って感じでハイタッチで出迎えた。直後に16年ドラフト1位吉川尚輝がライト前ヒットで出塁。この来季は1軍の正二塁手も期待される吉川が背負うのは、昨季まで藤村がつけていた「背番号0」だった。

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 過去から未来へ、先輩から後輩へプロ野球は継承され、新時代へと進む。1軍が11年ぶりのBクラスに終わった2017年、片岡治大、相川亮二、松本や藤村といった原監督時代に巨人へ加入した多くの選手たちがチームを去る。プロ野球っていうのは、一話完結の映画ではない。筋書きのない連続ドラマだ。時計はグルグル回り続けている。勝ったら次。負けても次。絶望している暇なんかないんだよ。

 巨人の藤村大介はひとまず終わった。だが、その野球人生がこれからも続くことを願っている。

 See you baseball freak……

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/4460  でHITボタンを押してください。

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