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「発達障害」医師と患者の対話 #1――岩波明×勝間和代

日本人の10人に1人に発達障害の特性が見られる

NHKスペシャルでも特集が組まれた

 現在、「発達障害」への関心が高まっている。テレビでも様々な特集番組が組まれ、関連書籍も多数出版されるなか、岩波明氏が今年著した『発達障害』(小社刊)は9刷、16万部を突破した。岩波氏は、昭和大学医学部精神医学講座主任教授で、同大学附属烏山病院長を兼任、ADHD専門外来を担当する同分野の第一人者である。

 一方、経済評論家として多方面で活躍する勝間和代氏は、幼少期から落ち着きがない、過活動の傾向があるなどと指摘され、先日、岩波氏のもとを訪れて、診察を受けたという。

 そんな2人に、臨床の現場と自身の経験から、発達障害の実態について語りあってもらった。

出典:『文藝春秋』2017年10月号

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勝間 私は、これまで複数の専門家から発達障害の一種であるADHD(注意欠如多動性障害)の傾向について指摘されてきました。つい先日、岩波先生に色々な話を聞いていただき、「軽度のADHDである」と診断してもらいました。発達障害、ADHD、自閉症、アスペルガーなどという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、私の実感では、各症状への正確な理解は進んでいない印象があります。

岩波 はじめに、発達障害の中心的な2つの疾患について整理しておきましょう。

 

 発達障害のひとつに、ASD(自閉症スペクトラム障害)という疾患があります。主な症状としては、「コミュニケーション、対人関係の持続的な欠陥」と「限定され反復的な行動、興味、活動」があげられます。対人関係の障害が見られるとともに、強いこだわりを示す傾向が顕著です。その中には、いわゆる「アスペルガー症候群」も含まれます。スペクトラムとは、「連続体」を意味し、ごく軽症といわれるアスペルガー症候群から重度の古典的な自閉症まで、様々なレベルの状態が分布しているのがASDです。

ASDよりも多いADHD

勝間 もうひとつが私も診断されたADHDで、主な症状は「多動性・衝動性」と「不注意」ですよね。

岩波 そうです。上の図に示したように、発達障害という用語は多くの疾患を含む大雑把なカテゴリーであって、単一の疾患を指すわけではありません。

勝間 その症状の区別が理解されていないので、つい最近も、ADHDタイプの私を、アスペルガー症候群の例として取材に来た方がいて、困ってしまったことがありました。

岩波 昔は、発達障害というのは、小児期から思春期に限定して起こる症状として捉えられてきました。だから、成長にともない、自然に治癒するものと考えられていた。ところが、成人になっても症状が持続し、生活上の問題が生じてくることが徐々にわかってきました。海外では80年代後半、90年代から積極的な取り組みが始まりましたが、日本ではやや遅れて、今世紀に入ってから光が当たるようになったんです。