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「発達障害」医師と患者の対話 #2――岩波明×勝間和代

日本人の10人に1人に発達障害の特性が見られる

#1より続く

遺伝との関係は?

勝間 そもそも発達障害の原因はどこにあるんですか?

岩波 まずASDについて申し上げると、その原因は今も完全には明らかになっていませんが、親族にASDの方がいる場合の発症率は確かに高い。遺伝的な要因がある程度大きいことは事実です。近親者にASDがいる人の場合、診断基準を満たさない場合でも、なんらかの傾向を持っていることもままあります。

 ADHDの症状も後天的ではなく、生まれながらのものです。ただ、ASDのように遺伝的な要因だけでは説明がつかない部分も指摘されています。現在、ノルアドレナリンなど脳内神経伝達物質の機能障害が病因ではないかとの仮説が提唱されているものの、詳しい検証はこれからです。

勝間 先ほど、学校における問題を色々お話しましたが、職場環境にも改善していくべき問題があるように思います。

 私の場合は幸い、自分の性格、傾向が日本企業には向いていないとすぐに気付いたので、20代で外資系企業に転職しました。

 そもそも日本の企業ではデスクがチームごとの島形式になっている職場が多いのですが、私はそれでは気が散ってしまってまったく仕事にならない。1人だけのブースでないと集中できません。

 新卒で入った会社では、上司から「どうしてもう少し真面目に仕事をしないのか」、「なぜもっと集中しないんだ」としょっちゅう怒られていました。

岩波 背景には、特に90年代末くらいから、会社側が個人を管理するようになってきた大きな流れがあります。非常に細かくルールを決めて、がんじがらめにしていく。よく「コンプライアンス」という言葉が使われるようになりましたが、言ってみれば堅苦しい社会です。そうなると発達障害の方々は、どうしても生きづらい。

日本の企業は島形式になっている職場が多い ©iStock.com

勝間 教育現場同様、会社もどんどん制約が強くなり、画一的になっているんですね。

岩波 そうなんです。発達障害の方の中には、例えば、単純ミスを何度も繰り返す、人の話が集中して聞けないなどの症状がどうしても続いてしまう方が確かにいる。上司の声は聞こえていても、頭に内容が定着しないんです。そういう事態は大学生であればさして問題にならなくとも、社会人になって取引先などに迷惑をかけたりすると、上司や会社から「もしかしたら発達障害かもしれないから病院へ行きなさい」と言われて、私のところにいらっしゃるパターンが最近よく見られます。入社2~3年目、20代半ばの社会人の方が結構多いんです。