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森岡 英樹
2017/10/15

日米中央銀行トップに注目 イエレン議長と黒田総裁の差はコミュ力にあり

夫はノーベル賞受賞の経済学者 ©共同通信社

 日米とも中央銀行の次期総裁人事が注目を集め始めた。

 まず、来年2月にはジャネット・イエレンFRB議長が満4年の任期を終える。

 リーマン・ショックを受け、国債等の大量購入による量的緩和に踏み切ったFRB。資産規模は、2008年の9000億ドルから4兆5000億ドルに拡大するほどの大規模緩和だったが、景気は回復した。

「中央銀行にとって一番難しいのは出口戦略。早すぎれば景気は腰折れし、遅すぎればバブルを生む。彼女の手腕はすばらしかった」(金融アナリスト)

 2014年10月に量的緩和を止めると、4回の利上げを実施。さらに今月からは保有資産の段階的な圧縮に入る。

「その間、株価も下がらず、景気はゆるやかな拡大を続けており、『適温経済』と評されています」(同前)

 だが、トランプ大統領は、イエレン再任に否定的とされ、後任にコーン国家経済会議委員長らの名前が上がっている。

 一方、日銀の黒田東彦総裁も来年4月で任期満了だ。

「総選挙後に人事が本格化するが、黒田氏の再任が有力視されている」(日銀関係者)

 ただ、イエレン氏とは対照的に、日銀の出口戦略は視界不良だ。

「2013年、物価上昇率2%を2年程度で達成すると公約しましたが果たせず、既に6回先送りされました。鳴り物入りのマイナス金利も効果は出ていません。最大の問題は、日銀が市場の信認を失いつつあることです」(同前)

 イエレン氏との違いはどこにあるのか。

「黒田氏は、異次元緩和やマイナス金利など、サプライズを好みます。一方、イエレン氏は手堅く、利上げや緩和縮小も予想通りでした」(同前)

 財務官僚出身で中央銀行勤務経験のない黒田氏に対し、イエレン氏はFRBに10年以上籍を置いてきた。

「若くしてエコノミストとしてFRBで働き、理事、副議長と階段を上ってきた。経済の見通しの確かさもさることながら、“コミュ力”が高い。市場とのコミュニケーションをうまくとりながらFRBの方針をなじませていくため、サプライズにならないのです」(前出・アナリスト)

 既に金融界では、“イエレン・ロス”による市場混乱を懸念する声も上がっている。