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【日本シリーズ】FA流出危機の大和は“宣言残留”こそが最高の決着

文春野球コラム 日本シリーズ2017

2017/10/31

【監督・プロ野球死亡遊戯からの推薦コメント】
 第3戦は山田隆道さんにお願いしました。多くの歴代監督が言うように、ある意味「日本シリーズは長期戦」。焦らず行けよ、行けばわかるさ文春野球。ここはその抜群の安定度に託します。“金曜日の虎”と呼ばれ、毎週コンスタントにブレないスタンスで原稿を書き続けた浪速の職人技を堪能してください!

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日本シリーズの一方で、阪神の注目はFA戦線

 現在、プロ野球界はソフトバンクとDeNAによる日本シリーズの真っ最中だが、その一方で他の10球団は早くも来季に向けてのスタートを切っている。中でも、FAやトレードなどを中心とした戦力補強問題は要注目だ。阪神ファンの私としても、ドラフト会議が終わった今は、そこに関心を寄せざるをえない。ご存知のとおり、阪神は以前からFA補強に積極的で、これまでにも多くの大物選手を獲得してきた。それについての賛否は別稿にするとして、阪神がそういう球団だからこそ、今オフのFA戦線も気になってしまう。

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 報道によると、とりわけ日本ハム・中田翔に注目が集まっているようだ。中田はかねてからFA宣言が噂されており、その際には阪神が獲得に動くと目されていた。もっとも、今季の中田の打撃不振や阪神の若手育成路線などの理由から、最近はその説にも陰りが見えており、阪神ファンの間でもいわゆる中田不要論を唱える者は多い。私もその一人だ。

中田翔の動向よりも気になる、名手・大和の流出危機

 かくして、今年のFA戦線について私がもっとも気になっているのは、この中田の動向ではなく、阪神が誇る守備の名手・大和についてである。報道によると、現在の大和はFA権の行使を検討しており、DeNAやオリックス、ヤクルトなどが調査しているという。

 すなわち、阪神にとっては大和の流出危機。これは極めて重大な問題だろう。

今オフに国内FA権を行使する意思を固めている大和 ©時事通信社

 あの超人的な身体能力と、内外野どこを守っても一級品の守備力。課題とされてきた打撃についても、プロ12年目の今季はスイッチヒッターに転向し、規定打席に未到達ながら打率.280と及第点の成績を残した。ただでさえ現在の金本知憲監督からは打力優先の起用方針が見てとれるだけに、大和のようなユーティリティーな名手の存在がどれだけ心強いことか。たとえレギュラーではなかったとしても、大和がベンチにいるだけであらゆる局面に対応できる。阪神はそんな大和を絶対に手放してはならない、と心の底から思う。

 しかし、その一方で先述した打撃面などの理由から、そんな大和でさえもなかなかレギュラーに定着できずにいる。また、今季の大和の年俸は推定5000万円とされており、その存在感のわりに安すぎることも引っかかる。

 プロ野球の世界ではレギュラー(規定打席到達)を何年も続けてこそ、年俸が順調に高騰していくという傾向があるため、大和のようなユーティリティープレーヤーは金額的に正当な評価を得にくい。チームにとっての不可視な重要度がどれだけ高くとも、可視化された数字が低いと、高く評価するためのきっかけを見つけにくいのだろう。

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