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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/10/18

大黒摩季、7年ぶりの復活 このMVはありなのか?――近田春夫の考えるヒット

『Lie, Lie, Lie,』(大黒摩季)/『BLACK MEMORY』(THE ORAL CIGARETTES)

絵=安斎肇

 大黒摩季……。

 しかしこうして字にしてみると、なんかよくわかんないけどなかなか凄い名だよなぁと。あらためてしみじみ思い知らされた格好の俺である。

 それはそうと、新曲の特典映像における役どころである“クラブのママ”がいい。板についてるというか様になっているというか(俺のようなほぼ99・99%風俗〜水商売的遊びを経験することなく人生を歩んで来た人間のいうことなのであてにはならないけどネ)、凄い本物っぽいのだ。

 ただですねぇ。ドラマの仕立てがのっけからシリアス過ぎといえなくもない。かなりビミョーな後味も残る。描かれている夜の世界の裏事情とはひょっとしてこんなもの? かしらんが、この“リアリティ”は“楽曲的な意味でのプロモーション効果”を思うとどうなのか。そこは意見の分かれるところではあるまいか。

 俺? ノーに決まってんじゃん。だってさぁ、これから先この曲を耳にするたんびに、ホステスがワインクーラーに顔突っ込んでゲロ吐いてるシーンが、頭に浮かんで来ちゃうんだよぉ! もう勘弁してくれでしょう(笑)。

 おっと、マクラはこれぐらいにして、そろそろ楽曲の話に入らねば。

Lie, Lie, Lie,/大黒摩季(Being)作詞・作曲:大黒摩季。活動休止を経て昨年の復帰後初シングルとなる。アニメ『名探偵コナン』主題歌。

 今回の大黒摩季は、イントロが流れてきた途端それとわかる“ラテンもの”である。実ははじめラテン歌謡と書こうとしたのだが、果たしてコレを歌謡曲と呼んでよいのやら。いや、メロディ/サウンドということなら、まさに、昭和以来の伝統さえ感じさせてくれる、王道といっていい普遍的なものなのだが……。

 逡巡してしまった原因は歌詞にある。

 わたくし、極論ではあるが、大前提、歌謡曲とはまず歌詞を気楽に味わえて楽しめなければ始まらぬ、そういう芸能ではないかと考える者だ。そこで大切なのは、聴き手が歌詞を理解するにあたって――演歌が例としては分かりやすいかも――そんなにアタマや耳を使わずとも済むようなコトバの連なりであるかどうか。

 かかる一点において、

♪心の声が何より容赦ないから/厳格な愛より浅はかな優しさに酔いしれたい

 この歌詞だが、ヒアリング(耳)の問題は置いても、そのくっきりとした真髄のようなものを掴みとるのに結構、努力はいるだろう。アタマを使わねばならぬのだ。

 そしてそれこそが、私にとっては述べたように、歌謡曲とjpopを対峙可能にさせる重大なポイントなのである。

 なんだけどさぁ、“ラテン歌謡”とはいってもあんまり“ラテンjpop”とかっていわないよね。この手の曲はジャンル的になんと呼べばよいのか? そんなことどーでもいいっちゃどーでもいいことなのは分かっているのだが……。

 そのパワフルな歌唱が、7年のブランクをまったく感じさせないものであったことはここに書き留めておきたい。

BLACK MEMORY/THE ORAL CIGARETTES(A-Sketch)14年デビュー。奈良県出身者中心の4人組バンド。映画『亜人』主題歌。

THE ORAL CIGARETTES。

 真面目にjpopとしてロックやってるね、この人たち。

今週の耳よりな話「キューバで、アメリカ大使館に音響兵器がしかけられて大使館員がダウンしちゃったっていうニュースがあったじゃない。まさにフィリップ・K・ディックの世界だと思っていたら、海外の識者もそうコメントしている記事を読んで意を強くしたんだけど、これもうSFの世界だよね」と近田春夫氏。「文春にはぜひ真相を調べて欲しいね!」