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【日本ハム】ライバル球団の視点で考えた「則本昂大はなぜ攻略されたか?」

文春野球コラム ペナントレース2017

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則本昂大はなぜ攻略されたか?

 パリーグのCSは予告先発があって、第1戦が「菊池雄星vs則本昂大」と発表になったときは胸が高鳴った。リーグを代表するエース対決だ。菊池が今季の最多勝、最優秀防御率なら、則本は最多奪三振、奪三振率1位だ。投手戦必至。1点勝負かもしれない。ただ対戦成績を見ると気になる点があった。菊池は対楽天8試合8勝0敗(防御率0.82)と圧倒しているのに対し、則本は対西武4試合1勝2敗(防御率5.76)と芳しくない。

 で、フタを開けてみたら9回5被安打1四球無失点(121球、9奪三振)の菊池と、4回7被安打6四死球7失点(105球、1奪三振)の則本だ。明暗くっきりだ。キレッキレの菊池雄星は(想像以上であったが)ある程度、予想していた。ショックだったのは則本の姿だ。ストレートを打たれ、ボール球を見極められ、最後はスライダーもフォークも打たれて、投げる球がなくなっていた。あんな則本昂大は滅多に見ない。調子が悪かったかというと、絶好調ではないにしても、いい球もたくさんあった。何であんなにあっさり攻略されたのか。

 以下は単なる僕の見立てである。取材準備としてメモしておく類いだ。まず、西武打線の狙いがはっきり絞られていた。基本はストレート狙いだ。低目の変化球は全部捨てていた。で、早い回にストレートをガツンと叩くのだ。変化球は振らないからカウントがすぐ投手不利になる。あれは、A「(クセを見つける等して)投げる前から球種がわかっていた」可能性がまず考えられる。1シーズン通して投球フォームを研究し、秋まで温存して、大事な試合で使ってくるケースもあり得る。

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 が、印象を言うと投球フォームのクセじゃなさそうなのだ。とすれば次に考えるのは、B「配球のクセ」だ。僕は則本昂大は球種、球速、制球、性格すべてにおいてトップクラスの投手だと思う。性格というのはエースの自覚や責任感のようなことだ。つまり、最高の投手なのだ。が、制球の良さ、エースの責任感が逆目に出ることもある。

CSファーストステージ初戦で西武打線に攻略された則本昂大 ©文藝春秋

 僕のシーズン中の則本の印象を言うと「勝負が早い投手」だ。奪三振王なのに球数が少ない。5球で勝負をつけたがる。これは捕手の嶋基宏もイメージを共有してると思う。おそらくエースとして完投を考えるからだ。またハートが強いから、ランナーを置いた場面で内角ストレートをズバッと投じる傾向がある。西武打線はそれを狙い打ちしていたと思う。

 これは「ランナーを置いた場面でカウント球はこう入る傾向がある」とか「カウント2ボール1ストライクではこういう配球が多い」とか、プロのデータの取り方はもっと具体的になるはずだ。狙い打ちの精度はその分、高くなり得る。また絶好調時は「わかっていても打てない」から、CS第1戦の則本は本来のキレじゃなかったのだろう。本来の則本はすべての球種が勝負球になるクラスだ。それが一つずつ勝負球を打ち込まれ、投げる球のないショック状態に陥った。

 僕らパ・リーグ党はあの則本の姿を覚えておかなくてはならない。各球団のスコアラーは来季のために映像をチェックしまくるだろう。CSにはそういう面白さがある。研究しがいがあるのだ。今夜、第3戦の行方は皆目わからないが、また新しい発見があるだろう。そしてファイナルステージではぜひ菊池雄星、もしくは岸孝之攻略の糸口をソフトバンクに示してほしい。どっちの「赤」が勝ち上っても楽しみは尽きない。

 附記  第3戦は楽天が見事勝利し、「下克上」を果たしたのだ。梨田監督の用兵(枡田起用&継投)がハマっている。こうなると本稿のテーマはもうひとつ別の色彩を帯びるだろう。則本は次回登板、何をどう変えてくるか?  ファーストステージの屈辱をいかにはね返し、エースの責任を果たすのか?

【日本ハム】ライバル球団の視点で考えた「則本昂大はなぜ攻略されたか?」

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