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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2016/08/20

ハムロ、行きまーす!
――葉室麟が描く戦国の女たち

genre : エンタメ, 読書

 大河ドラマ「真田丸」の細川ガラシャは、このコラムが更新される頃にはもしかしたらもう退場してるかな? 個性派のおじさんたちに目を奪われがちだけど、どうしてなかなか女性陣も魅せてくれてる。淀、寧、稲、ガラシャ、こう、薫、とり、松、春、梅、きり、阿茶(斉藤由貴の演技、大好き!)。

 史実と史実の間をいかにドラマティックに、且つ史実と矛盾がないようにつないでみせるかが歴史小説・歴史ドラマの面白さだけど、こと女性に関しては、まず史料自体があまりに少ない。重要人物でも名前すらわかってないことだって、珍しくない。戦国時代の家系図なんて、女性のところは「女」とか「誰それの室(妻)」とかだからね。だからこそ、女性たちをどう描くかというのはひとえに作家・脚本家の腕にかかっている。

 たとえば真田信繁の側室に関しては「堀田作兵衛の妹が女児を産んだ」「高梨内記の娘が女児を産んで阿梅と名付けられた」「阿梅を産んだのは正室の竹林院との説も」などの情報がある。そこで名前がわからない最初の側室を「梅」ということにすれば、のちに生まれる娘に信繁は初恋の人の名をつけた、てな胸キュン展開にできるわけだ。まあ、ドラマでどう描かれるかはまだわからないけども。

 ことほどさように、史料がない分、女性の描き方については自由度が大きい。だがそれは「何を書いてもいい」というわけではない。なるほどこう来るか、それありえるかも、そうだったら面白い――という説得力がなければかえって興ざめだ。そこで今回紹介するのは、葉室麟が描く戦国の女性たちの物語、『冬姫』(集英社文庫)と『山桜記』(文春文庫)。これが巧いのよ。まさに「こう来たか!」と手を叩いたね。

山桜記 (文春文庫)

葉室 麟(著)

文藝春秋
2016年7月8日 発売

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