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特集
総選挙2017 オレの争点 新聞、テレビが報じない政策課題を問う

藤田 孝典
2017/10/21

政治不信というよりも、市民の連帯感が乏しい

 しかし、いまでは労働運動も社会活動も低迷の時代が続いている。労働組合の組織率の低さを見れば明らかだろう。日本の労働組合は多くは「正社員クラブ」と批判されて久しいし、外部のNPO活動も行政の下請け化が著しい。市民や労働者が団結して、生活や労働について、政府や企業に緊張感を持って要求する機会も明らかに減った。ストライキなどもはや歴史的な遺物でもあるかのようだ。生活改善を求める市民のよりどころ、その回路が著しく減退している。

 広がっているのは、政治不信というよりも団結できない、あるいは組織化することを忘れてしまった市民相互の不信といってもいいだろう。人々が相互に社会を構成する一員として信頼できていない。政治への要求を上げる前に、市民の団結感、連帯感が乏しいのである。

 この状況において、私たちが優先してやるべきことは社会を一から取り戻していく活動である。苦しんでいる市民がいれば、その人に想いを寄せることであり、手を差し伸べることだ。そして、同じ苦しみを生まないように可能な限り、当事者の気持ちをもって声を上げていくことだろう。

 例えば、日本では過労死が相次いでいる。知られていないだけで、毎日のように全国で人々が命を落としている。多くの人々が現実を知り、改善を求めれば法律も動くし、世論も高まっていく。「社会問題」を「自分の問題」として捉えていく作業が第一歩となるはずだ。

被災地には多くのボランティアが集まった ©共同通信社

 また生活困窮世帯への子ども食堂など、ボランティアの動きが活発化している。困っている子どもたちへ手を差し伸べ始めた市民が多くの具体的な笑顔を作り出している。東北や九州への被災地支援も同様だ。私たちは多くの同胞を見捨てない優しさや強さを持っている。議論するだけでなく、直接的に人と関わり、関わりの中から一緒に答えを探っていく活動だ。

 これらの活動に参加した人々こそ、より苦しい人々を生まないために、具体的な要請行動に出ていけることだろう。ここに日本社会の明日を考える上で、重要な示唆があるのだろう。人々の言動や運動こそが社会を変えていく。

地に足のついた社会改革こそが必要

 だからこそ、生活に困っている人々を日常で助けていく活動や労働条件を具体的に改善する活動、社会保障をよくしていく活動など、やれる範囲で参加してほしい。はっきりいえば、これらの日常活動が政治活動よりも重要であり、結果として政治に声を反映させる最短の方法である。

反戦よりも「明日の暮らし」を ©文藝春秋

「平和・反戦」や「憲法9条改憲論争」といった観念的な右派・左派の対立は、明日の生活に苦しむ市民、労働者を置き去りにしたまま進んでいる。憲法9条よりも生活や労働に密着した憲法25条に立脚し、地に足のついた社会改革こそが必要である、と国民と政治家双方がそのことに気づくべきだろう。

 間もなく選挙期間も終わりを迎える。静かな日常生活が戻ってくるだろう。そのときにあなたが選挙結果を受けてどう行動するかで未来は変わるはずだ。選挙しか社会を変える方法はないと思うのか、日常のなかで変化を起こしていくのか。私は皆さんの行動を信じているし、選挙結果如何に関わらず、よりよい社会を構築できると信じている。