昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

徳山 大樹
2017/10/23

「その溶液に浸すと、イカが膨れて見た目がよくなるんだ。高く売るためだよ。でも、その溶液は口にしてはならない。自分なら形が悪くても添加物のないイカを食べるからね」

 日本向けに大量の水産加工品を作っておいて、イカ社長は悪びれもせずこう言い放った。

 実際に添加物の効果を見せてもらった。下の写真をご覧いただきたい。

 

 左が無添加、右がさきほどの添加物に浸したイカリングだ。あきらかに形や色ツヤが違う。とても酸化防止剤とは思えない薬品に漬けられているのだから怖い。

なぜか「生産地 青島」と書かれたダンボールが……

 ふと、製品を詰める段ボール箱を見て、あることに気付いた。

 

 生産地の欄に「山東 青島」と記載されているのだ。青島は石島から200km以上離れている山東省の大都市だ。日本でもおなじみの「青島ビール」でご存じの方も多いだろう。

「このイカはどこで漁獲されたのですか?」

「石島近海ですよ。このあたりではたくさん獲れますから」

「でも、生産地が『青島』となっていますよ。産地偽装では?」

「え? いやあ、なんでかな(笑)」

 イカ社長は問い詰められて、あきらかに狼狽した。

「さっき、日本へ輸出しているとおっしゃっていましたが、本当に“輸出権”を持っている?」

イカ社長が産地偽装を認めた!

 中国では、企業が日本へ商品を輸出する際、政府に対して「対外貿易権」の届出・登録が必要となる。輸出の権利を持たない企業は、海外取引を直接行うことが許されていない。

「え? 持っていますよ、ははは……」

 社長はとぼけながら、応接室へ私と通訳を案内すると、観念したようにため息をついた。

「実は、輸出権を持っているのは青島の大きな企業で、商品をそこへ送って日本と取引してもらっているんです……」

 やはりウソをついていた。こうなると、5000トンの出荷量も眉唾だ。

 産地偽装を認めたイカ社長は不機嫌そうにこう言い訳した。

「10年前は日照市(山東省)で水産加工の工場を営んでいましたが、化学薬品工場がたくさんできたので水質が汚染されて、石島へ移転したんです。我々はまだマシですよ。この近くに100パーセント日本向けの白身魚フライ工場があるけど、そこもひどいもんです」