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企業統治と「傍流の悲しみ」 神戸製鋼事件を読む

「週刊文春」10月26日号最新レビュー

2017/10/21
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企業ガバナンスと「傍流の悲しみ」 

 神戸製鋼は「大きな部門がいくつも存在する縦割り組織」で、川崎社長はそれに横串を入れようとし、その過程でJIS規格の強度改ざんが発覚する。なるほど「関連性の薄い事業が並ぶ縦割り構造が企業統治の機能不全を招き、不正の温床となってきた」(注)との指摘もある。

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 そういえば前出の大鹿は、最近著した『東芝の悲劇』(幻冬舎)で、西室泰三が東芝の社長時代(96-2000)に採用したカンパニー制が、後の粉飾決算の遠因になったと指摘している。部門ごとの独立性を高めるカンパニー制だが、実際のところは縦割り組織となって、本社の経理や財務などコーポレートスタッフが実情を把握しにくい状況を生み出したのであった。

 それでいえば川崎社長の縦割り是正はガバナンスの強化を目指したものであろうし、その過程で40年来続く不正をあぶり出したまではよかったのだろう。しかし、そこから先がまずかったようだ。記事には「品質保証を徹底するため全社的にアンケートをとったところ今回の一連の不正が明るみに出た。いざ不祥事が起きた時の対応力がなさ過ぎます」と経済記者が指摘する。

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 これが傍流の悲しさなのか。危機にあって、まるで企業統治できずにいる。

 その川崎社長、地位に固執する気はないのか、バラの栽培が趣味ということもあって地元のバラ園に「再就職したい」とテレビの取材で語る。そこのバラ園を取材した文春記者に、若手の女性従業員はこう答える。「いいですよ、私の下で一からスタートするんやったら」。さすが関西、“おしゃべり”が上手い。

(注)http://www.sankei.com/west/news/171014/wst1710140059-n1.html

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