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楠木 建
2017/10/24

「男の威張り」を受け止める「威張られ界」の横綱

楠木建の「好き」と「嫌い」  好き:見くびられる人  嫌い:威張る人

上には上がいる

 日本の商売人「なんだかんだ言っても、いざ切った張ったの商売の交渉となると、日本人はユルい。その点、華僑はさすがにキツい商売を仕掛けてくる。日本人が束になってかかっても華僑ひとりにかなわないね」

 華僑の商売人「いや、世界中で商売をしてきた経験でいえばユダヤ商人は実に厳しい。こっちはしょせん大陸的でおおらかなところがあるけれど、ユダヤ人は商売になると冷静冷徹でぎりぎり詰めてくる。華僑が束になってもユダヤ商人ひとりにかなわない」

 ユダヤの商売人「いやいや、商売に関しては筋金入りのわれわれも、レバノンやシリアの腕っこきの商売人には一歩譲るよ。なんたって、連中はフェニキア以来の商売の本家本元、年季の入り方が違う。ユダヤ商人が束になってかかってもレバシリ商人にはかなわない」

 レバシリの商売人「いや、商売人として最強なのは、インドのマルワリ族だ。商売のツメの厳しさでは世界広しといえどもマルワリが最強。百戦錬磨のレバシリ商人が束になってもマルワリ商人ひとりにかなわない」

 マルワリの商売人「まあ、そうでしょうな。華僑やユダヤやレバシリをもってしてもわれわれの敵ではありません。ところが、われわれマルワリ族が束になってもかなわない相手がひとつだけありまして……」

 日本と華僑とユダヤとレバシリの商売人「ほう、意外ですね。それは?」

 マルワリの商売人「束になったときの日本人」

 定番のビジネス・ジョークなのだが、わりとよくできた「廻り落ち」だと思う。「上には上がいる」という話である。

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 前回「怒るな、悲しめ」原則について話した。威張るのは男の本性にして宿痾。威張られても怒らずに悲しみ、しみじみと男性本能のブルースに耳を傾けましょう、という提言である。

 それはそれで味わい深いものがあるのだが、かく言う僕も当然のことながら威張る人は嫌いである。威張られ状況に嵌ってしまったときは気持ちを切り替えて積極的に悲しむようにしているが、なるべく威張リストとの遭遇は避けたい。不幸にして出くわしてしまったときの緊急避難策としての「怒るな、悲しめ」である。

 威張られ界は広く深い。「怒るな、悲しめ」程度ではまだまだ十両か平幕。上には上がいる。そこで、今回は威張られ界の三役をご紹介したい。