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【日本ハム】王貞治ゆかりの洋食「50BAN」で見た内川聖一のホームラン

文春野球コラム クライマックスシリーズ2017

ソフトバンクは「気持ちのチーム」

 CSファイナルステージ第1戦の夜は墨田区八広の洋食「50BAN」にいた。行きつけだ。かつて墨田区業平にあった王貞治ソフトバンク球団会長(僕の世代は「王選手」のほうがしっくり来る)のご実家、中華「五十番」の流れを汲む店。洋食屋さんなのに中華メニューが充実している。オーナー兼シェフの川口俊幸さんは王会長のいとこに当たる。少年時代は「サダハルちゃん」「トシちゃん」と呼び合う仲だったとか。早実のOBでもあって、今年はこの店で清宮幸太郎の話がよく出た。

 当然、9回裏の内川聖一のホームランは店内大いに沸いたのだ。楽天の守護神・松井裕樹を叩き、1点差に詰め寄る一発だった。その時点ではまさか内川がその後、同一カード4試合連続ホームランのCS記録を打ち立て、「ベース回りながら、王会長はいつもこんな気分でホームラン打ってたんだろうなと思って。こんな気分で野球やるのは楽しいだろうなと思いました」(21日、第4戦後のヒーローインタビュー)とコメントするとは思いも寄らず、「うわぁ〜、1点及ばずか」「もうちょいでした」なんて言っていた。ソフトバンクは最多勝の東浜巨を立てて第1戦を失うという痛恨の敗戦だった。

20日のCSファイナルステージで逆転スリーランを放った内川聖一 ©時事通信社

 旗幟(きし)鮮明にしておこう。ファイナルステージは洋食「50BAN」の縁もあって、ソフトバンク寄りである。ファイターズファンの僕からしたらホークスは高い目標だ。いかに柳田悠岐の不在が大きいといっても3位チームにやられてどうするという思いがある。打ち破るのは自分たちファイターズでありたい(うちは5位だけど……)というジェラシーもある。というのも楽天がヤフオクドームで強いのだ。何と今季7勝5敗と勝ち越している。これはヤフオクが大の苦手(1勝11敗)の2位西武とは対照的だ。

 パ・リーグの勢力図は要するにソフトバンクが頭一つ(二つ三つ?)抜けていて、毎年その挑戦権をどこが手にするか、という感じだ。今季は楽天なのである。ペナントレースの失速でいったんは手離したかに見えたが、CSファーストステージを見事勝ち残って、再び挑戦権を手にした。打線が活発だ。勢いがある。そして何よりヤフオクドームの戦いに自信を持っている。

 ソフトバンクvs楽天のCSファイナルは大変興味深いカードだった。ソフトバンクは「巨大戦力」と言われるが、実のところ今季は先行逃げ切り型の守りのチームだ。先取点を取った試合の勝率が何と8割9分にも及ぶ。打線は好打者、強打者が揃っているようで全体ではそんなに打ててない。柳田だけが突出していい数字を残してきた。が、主力級の得点圏打率が軒並みいいのだ。僕はこれはデータ野球のようなやり方で、狙い球がしぼれているとしか思えない。

 それからチームカラーとしてはギューッとまとまる力がある。僕はずっと「気持ちのチーム」と評してきた。基本は練度の高い実力派チームだが、何かの拍子にぶわっと火がつく。そうなったときのソフトバンクは恐怖である。ベンチも球場もお祭り騒ぎだ。あのムードをつくられるととんでもなく厄介だ。

 さてCSファイナルだが、本稿の締切タイミングは10月22日の午後イチ、ちょうど第5戦のプレーボール時刻だ。冒頭、内川の4試合連続ホームランの話を書いたが、もしかすると今日も打って5試合連続になるかもしれない。まさに神がかりの内川が発火点となって、ぶわっと火がついてしまった状態だ。(「勝負はゲタを履くまでわからない」と言うけれど)僕にはシリーズの流れはほぼ定まったように見える。