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新皇位継承「5つの疑問」【全文公開】

source : 週刊文春 2016年7月28日号

genre : ニュース, 社会

〈天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する〉
 皇室典範第四条にはこう明記されているが、天皇の崩御以外に皇位継承については想定されていない。天皇の「生前退位」の実現には皇室典範の改正など法的措置が必要になる。
 新しい皇位継承のもとで皇室はどう変わるのか。

退位した天皇の呼び名は?

 

 天皇が生前退位された場合、第119代の光格天皇以来、約200年ぶりの譲位となるが、先帝となった天皇の呼称はどうなるのか。

「その際の呼び名は皇室典範に規定がなく、近代でも例がありません。歴史的に見ると、『太上(だいじょう)天皇』(上皇は通称)が一番有力でしょう。皇后の美智子さまは『皇太后』になられます。こちらは現行典範にも規定があります」(皇室ジャーナリスト・山下晋司氏)

「太上」の由来を古代史に詳しい聖心女子大学の佐々木恵介教授が解説する。

「語義そのものは『もっともすぐれた』という意味のようですが、本来、太上天皇の称号は、中国で退位した皇帝に奉られる称号の『太上皇』や『太上皇帝』にならったものです。日本の律令制度では、太上天皇は退位した天皇に自動的に付与される地位でした」

 日本で最初に生前退位が行われたのは645年。第35代皇極天皇は、前代の舒明天皇が没後に即位した女帝で、皇后から天皇になったが、「大化の改新」で有名な息子の中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我氏を滅ぼした乙巳(いっし)の変の後、弟に譲位して、第36代の孝徳天皇が誕生したという。

即位礼正殿の儀で、高御座からお言葉を述べる天皇。手前は海部俊樹首相(当時)
Photo:Kyodo

 実は125代の歴代天皇のうち約半数が生前に譲位をしていた。なぜ現行の典範に規定がないのか。

「明治憲法制定の際、旧皇室典範に『天皇より上の地位を作らない』と定めたことの名残です。現行典範は一般の法律として改めて制定されたものですが、旧典範を受け継ぐ部分も多いのです」(日本大学教授・古川隆久氏)

 ただし、日本大学教授の百地章氏は、もし認めるとしても、生前退位実現までの道のりは長いと解説する。

「皇室典範第四条の改正ですね。特別措置法で一代限りの例外規定を作るという意見もありますが、これでは何でもできてしまう。本来的に、天皇陛下は安定した皇位継承の制度を望んでおられると思いますし、立憲君主制である以上、典範の改正には慎重でなければならないと考えます」

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