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最高裁の判断は? 強制わいせつ罪の成立に“性欲を満たす意図”は必要か

 強制わいせつ罪の成立に「性欲を満たす意図」が必要かが争われた裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は18日、判決を前に弁護側と検察側から意見を聞く弁論を開いた。最高裁が弁論を開いたため、従来「性欲を満たす意図が必要」としてきた判例を「不要」と変更する見通しとなった。

 司法担当記者が解説する。

「この問題について最高裁は約半世紀前に判例を示したきりで、刑法学者の間では社会の変化などに伴って判例を変更すべきだとの声が上がっていました。今回の裁判はこの法律問題が焦点となっていて、事件の内容にはあまりスポットが当たっていませんが、被告の犯行は実に卑劣なものでした」

 被告は甲府市に住む男(40)。2015年、13歳未満の女児にわいせつな行為をさせた上、全裸の姿をスマートフォンで撮影するなどし、知人の男に送信したとして起訴されている。このため、男は強制わいせつ罪以外に、児童ポルノ処罰法違反などにも問われている。ちなみに、強制わいせつ罪と強制性交等罪(今年6月の刑法改正で強姦罪から名称変更)との違いは、「姦淫」(性交)の有無。前者は性交を伴わないわいせつ行為に適用される。

最高裁の判断が待たれる ©文藝春秋

「被害女児は、性的行為の意味すら分からない幼さでした。被告と非常に近しい関係だったため、言われるままに応じてしまったのです。今後、成長する中でトラウマになるかもしれません。可哀そうな事件です」(同前)

 そもそも「強制わいせつ罪の成立に性欲を満たす意図が必要」とした判例(1970年)の事件で、最高裁は「被告の目的は被害女性への報復で性的意図はなかった」として強制わいせつ罪の成立を否定していた。今回の事件では、被告は「知人から金を借りようとしたら、条件としてわいせつ画像を求められたので、(わいせつ行為や撮影などの)行為に及んだ。性欲を満たす意図はなかったので、判例に従えば、強制わいせつ罪は成立しない」と主張しているのだ。

 しかし最高裁は「金を借りる目的だったとしても、強制わいせつ罪が成立する」として判例を変更する見通しだ。

 被害の深刻さを考えれば、当然の結論になると言えるだろう。