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菅野 朋子
2017/10/27

朴槿恵前大統領が「ボイコット宣言」した異例すぎる裁判

どんな結果が出ても、保守VS進歩のフレームの中でひと波乱は必至

「法の名を借りた政治報復は、私で終止符を」

「今後、裁判は裁判所の意向に任せます」

 10月16日、6カ月間、沈黙を続けていた朴槿恵(パク・クネ)前大統領が、法廷で初めて口を開いた。

 朴前大統領はこの日、「誰からも不正請託を受けた事実はない」と嫌疑を強く否定。そして、「政治的な影響と世論の圧力にも負けず、ただ憲法と良心に従って判断するだろうという裁判所への信頼はもはや意味がないという結論に至った」と話し、「法治の名を借りた政治報復は、私で終止符を打ってくれればと思う」と用意していた原稿を数分間ほど読み上げたと伝えられた。

 裁判への不服を露わにした内容に傍聴席はざわついたが、さらに驚くことが起きた。裁判終了後、朴前大統領の7人から成る弁護団も全員、辞意を表明したのだ。

 韓国社会は騒然となり、翌日メディアも一面で報じ、保守・進歩いずれも「事実上不服示唆」(朝鮮日報、10月17日)、「事実上、裁判にボイコット」(中央日報、同)、「朴槿恵、裁判ボイコット“政治闘争”」(ハンギョレ新聞、同)と批判的だった。

 朴前大統領は公判で、「検察が6カ月間捜査し、裁判所が再度6カ月間審理をしたにもかかわらず、さらに勾留しての捜査が必要だという決定は私としては受け入れがたい」と胸の内を明かしたという。

 中道派の全国紙記者の話。

「朴前大統領は6カ月間の勾留期限の満了に伴い、身柄が釈放されるかどうかをひとつの目安にしていたと思われます。

 それが、やはりというか、異例の延長となりました。

 この背後には現政権の意図が働いたと見て、一握りの保守派の結束を促し、そして支持層に訴える目的で反撃に出たのでしょう」

裁判所に到着する朴前大統領 ©getty

 朴前大統領は今年3月10日に弾劾が認容され、大統領職を罷免されたのは周知のとおり。

 ひと月後の4月17日には、企業からの収賄罪など18の嫌疑により起訴され、拘置所に送られた。

 初めて裁判が開かれた5月23日からは週に4回の公判が開かれたが判決には及ばず、刑事事件の6カ月間という勾留期限を迎えた。

 韓国の刑事訴訟法では「被告の身体的自由を侵害しない」という理由から勾留期限が設けられていて、それは最長6カ月。

 朴前大統領の勾留期限も10月16日で満了となるはずだったが、3日前の10月13日に勾留期限がさらに6カ月延長されることが決定され、身柄はそのまま拘置所に留め置きとなった。

よくないイメージを再度認識させる狙い

 勾留が延長される直前、青瓦台(韓国大統領府)はセウォル号沈没事故での記録に改ざんがあった事実を突然、発表した。

「なぜこの時期に?」と韓国メディア関係者は首を傾げたが、

「後で考えれば、勾留延長に批判がでないよう、世論に朴前大統領のよくないイメージを再認識させる狙いもあったと思われます」(同前)