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気になるニュースがあると「こち亀」か「IWGP」がすでに書いている──石田衣良×朝井リョウ

IWGP「池袋ウェストゲートパーク」20周年記念対談

デビュー20周年を迎える石田さんと、
デビュー前から石田さんの小説の読者だった朝井さん。
現代の空気を切り取り続ける2人が、
世代の違いや作家としての悩み、小説の変化を語り合う。

◆ ◆ ◆

僕らは「若くして苦労もせずにちやほやされて」って言われる新旧パターン

朝井 デビュー20周年、本当におめでとうございます! 僕がデビューした時、初めて対談していただいたお相手が石田さんだったので、このような機会にお話できてとても感激しています。

石田 懐かしいなあ、まだ大学生だったよね。朝井くんはデビューして何年?

朝井 今、8年目です。

石田 直木賞を取ったのは何年目の時だっけ?

朝井 4年目だと思います。

石田 そうか。僕が直木賞をもらったのがデビューして6年目だったんです。だから僕たちは、「若くして、そんなに苦労もせずにちやほやされて」って言われるパターンの新旧なんです。これってなかなか辛いポジションだよね。

朝井 ニコニコするしかないですよね。

石田 本人はこんなに地味な格好してるしさ。朝井くん、もうちょっと明るくポップにしていいんじゃないの?

朝井 今、ポップさが弾けてるつもりです。

石田 えー! 紺色のワントーンじゃない!

朝井 服じゃないところでポップさを出せないかなと……。スタイリストをしている友人が春夏用と秋冬用で2パターンのコーディネートを考えてくれたんですけど、「何も情報を与えない服」をテーマに選んでもらったんです。

©榎本麻美/文藝春秋

石田 なにそれ、スパイみたい(笑)。それなら朝井くんの場合は踊るしかないよね。僕がアイドルにハマった時に、それをアイドル好きの朝井くんと柚木(麻子)さんが聞きつけてきて、一緒にカラオケしたんです。2人とも踊り狂ってたよね(笑)。朝井くんの新しいエッセイ集(『風と共にゆとりぬ』)も読んだけど、自虐ネタ満載ですごく笑ったよ。でも、ああいうのを世の中に出し続けていて大丈夫?

自分が他人にどう見られているかは一切気にしなくていい

朝井 カラオケ最高でしたね~! 個人的には、能動的に手を伸ばしてくれる人が触れるメディア、たとえば本やラジオの中ではどれだけふざけても安全圏だと思っているところがあります。逆に、テレビに出ることは怖いです。

石田 朝井くんはテレビも向いていると思うけどな。

朝井 石田さんは情報番組のコメンテーターをされたりクイズ番組に出演されたりしていますが、テレビって自分でハンドルを握れないし、特殊なストレスを感じて疲れたりしませんか?

石田 僕は、自分が他人にどう見られるかは一切気にしなくていいと思っているんです。だから、テレビは楽ですよ。

朝井 わあ……その境地に、何歳の時に辿り着いたんですか……?

石田 早くからそうでしたね。1人で映画を観て、音楽を聴いて、本を読んで、面白いと思ってもそれを話す相手もいない、孤独な読書少年だったんです。それで今でも、人にどう思われようと気にならないし、理解されないことに対して耐性がある。だから、ネットの世界でみんなが「いいね」をもらおうと競っているのを見ると、本当に不思議だな。

一方で、最近は、数を稼げるものが正義だという風潮があるけど、これは何とかしたいよね。本はマイナーだという縛りというか、思い込みがある感じがして。

1対1で男女が戦うと、漫画や恋愛小説を読んでいる女の子が圧勝

朝井 短期的に結果が出るものにばかり手を伸ばす風潮がありますよね。本は、人生の中で長期的に効いてくるものだと思うんですが、今はそういうものにお金と労力を注ぎづらい印象があります。

石田 物語を読んでおくと、心の力になるんですけどね。少女漫画や恋愛小説を読んでいる女の子と、何も読んでいない男が1対1で戦うと、女の子が圧勝だからね。

朝井 戦わされてる! でも、石田さんは小説家としては珍しく、短期的に結果が出るものにもコミットしていますよね。ブックサロンを開いたり、テレビ局と組んで新しいことをしたり。

石田 とにかくジタバタしたいんだよね。今のまま、出版界がどんどん縮んでいく中に押し込められていくのは嫌だから。

朝井 小説家たるもの小説を書いていればいい、と考えるのは簡単ですけど、それだけではなく外に向けて何かやろうとされている姿勢に感銘を受けます。

石田 エッセイを読んで思ったけど、朝井くんって自己分析がよくできているよね。自分はこういう小説を書いていく、というのをきっちり考えている。

朝井 ありがとうございます。ただ、最近、それは自分で限界を決めているようなものだからよくないよと指摘されて、痛いとこ突かれた……とどんよりしていたところでもあります。石田さんは、青春アクションものの「逆島シリーズ」のように、今まで書かれてなかったジャンルに挑戦し続けていますよね。

石田 漫画が好きなので、少年漫画のような話を書きたくてあのシリーズを始めたんです。ライバル同士がどんどん強くなって、最後には世界を左右するようなインフレしていく話。漫画は世界中で読まれるほどの力があるから、その黄金パターンを使って書いてみたくて。あれは趣味みたいなものです。

朝井 趣味!? (小声で)いいんですか、その担当さんコレ読んでるかも。

石田 大丈夫、担当編集者も知ってるから。

朝井 安心しました。確かに、皆が新しいものを生み出そうと頑張っている一方で、やっぱり古典的な構造の物語って読んでいて気持ちいいし、多くの人に受け入れられますよね。そのことに、希望も絶望も同じだけ感じていたりします。

石田 でも、そういうのはどちらかというと漫画のほうが得意です。僕も朝井くんも、あんまりそういうわかりやすい物語を書けないよね。作品の中で人もそんなに殺せないし。

朝井 殺せないですね……。

石田 今は、普通のことを書くのが本当に難しくなっています。ものすごく立派というわけではなく、今を普通に生きている人を書くのが難しい時代になっていると感じますね。