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連載尾木のママで

尾木 直樹
2017/11/01

“教育貧困国”に落ちぶれている日本 もっと議論を――尾木ママ

イラスト 中村紋子

 今回の総選挙ほど、「子育て・教育」が争点になった例は過去になかったと思う。自民党は「3~5歳児の幼稚園、保育園の無償化」「低所得家庭の子供に限った高等教育の無償化」、希望の党は「待機児童ゼロの法的義務づけ。幼児教育、保育無償化」、立憲民主党は「大学授業料の減免、奨学金の拡充」など、細かい違いはあれ、基本政策はほぼ同じ。

 確かに日本は「教育貧困国」に落ちぶれている。教育への公的支出の対GDP比はOECD平均が4.4%のところ日本は3.2%で最下位。だからこそ、各党も“無償化”を教育政策の目玉としたわけだけど、その内容について議論を深めようという姿勢がみられなかったのは残念ね。

 例えば就学前教育については、待機児童問題や保育士の待遇改善など、教育の質を担保するためには解決しなければならない問題が山積み。しかも安倍首相は2012年の衆院選でも幼児教育の無償化を公約に掲げていた。待機児童ゼロも本来は今年度末までに達成するとおっしゃっていた政策のはず。見通しが甘かったのならその反省を踏まえて今後の展望を語ってほしかった。

 また、高等教育無償化についていえば、高卒で就職する若者が20%弱という中、彼らが働いて納める税金が、定員割れで誰でも入れる低レベルの大学へ投入されることへの国民感情の反発も心配。高大接続も含め、大学改革をどのように展開していくかという見通しもなく、安易に無償化だけを進めることが適切か否かという議論もある。

 ボク自身は、原則として教育の無償化自体には大賛成。「教育は未来への投資」という原理を忘れず、内実の伴った政策を実施してほしい。そのためには、メディアやボクたち国民ひとりひとりが、政治家の発言に惑わされることなく、厳しくチェックしていく必要があるんじゃないかしら。