文春オンライン

亡くなった家族が遺したパソコンやスマホ──まず何をするべきか? 「デジタル遺品」最前線♯3

プロバイダによって異なる遺族対応

2017/11/07
note

亡くなった人のアカウントやデータは引き継げる?

──ところで、故人が使っていたパスワードが見つかったとして、それを使って故人のパソコンやスマホにログインすることについて、不正アクセス禁止法などの法律にひっかかる恐れはないんでしょうか。

古田 不正アクセス禁止法は、本人になりすました上で本人の許可なく、オンラインの回線を使ってアクセスするのが前提ですので、オフラインであれば問題ないと思います。

 逆に言うと、そこでメールを受信してしまうと抵触する恐れがありますが、亡くなった本人から「俺が死んだらお前に託す」という伝言があったことが証明できれば、本人の代理ということで抵触を免れるとも解釈もあります。

ADVERTISEMENT

──その証明というのは、どのようなレベルのものが必要なんですか。遺言のような手続きは必要なんでしょうか。

古田 デジタル遺品に詳しい法律家の話ですが、法的なものではなく、メールで「俺が死んだら頼むよ」という一筆が残っていることが証明できれば大丈夫です。エンディングノートに書いておいてもらうのでも構わないようです。

プロバイダによって異なる遺族対応

──Facebookにおける「追悼アカウント」のような仕組みでも大丈夫なんですね。

古田 専門家ではないので、法的な解釈は難しいです。ただ現実的には、本人の許可は関係なしに、遺族本人が亡くなった人のアカウントでログインすることは結構あるんですよ。

 亡くなった人のブログで、最新の投稿に「昨日未明、○○は天に召されました」「生前はお世話になりました」といったメッセージを家族が書いているケースをよく見かけますよね。あれは厳密には利用規約に違反している恐れがありますが、過去7~8年プロバイダーさんやSNS運営会社さん30~40社に話を聞いた限りは、それを咎める行為はないんですね。

 もちろん、ブログをそのまま無断で引き継ぐのはよくないと思いますが、ただ亡くなった直後に訃報を載せるために、遺族であることをいちいち証明して、運営側に許可を求めてアップするとなると、どうしても数日はかかってしまう。そうすると葬儀の告知ができなくなるので、現実的には黙認するしかない状態になっているんですよね。

プロバイダによって遺族対応は異なる ©iStock.com

──それは将来的には、法律なり規約なりが整備されていくんでしょうか。

古田 だと思います。デジタル遺品全般に言えることですが、遺族からメーカーやサービス提供側に相談に行った件数が、まだかなり少ないんですよね。それゆえ、遺族を視野に入れた相続関係の利用規約が全然固まっていないのが現状です。

 あと、プロバイダーによっても遺族対応がまったく違うんですよ。例えばBIGLOBEは「承継」といって、法定相続人がいればアカウントの引き継ぎを認めているんですが、niftyは「一身専属性」といって、亡くなったその人とだけ契約を交わしているので、たとえ家族であっても引き継ぎはできないというスタンスです。なのでniftyに遺族が相談した場合、身分証明がしっかり行えたとしても、できるのはアカウントの削除だけですね。

 実はBIGLOBEも、かつては一身専属性だったんですよ。でも遺族から何件も問い合わせを受けて、じゃあ承継できるようにしようと、2013年ぐらいに変わったんですね。インターネット黎明期は基本的にはみんな一身専属性だったんですが、2009年ぐらいから徐々に承継を認めようという流れがもでてきているんです。

 ただ、これが電子書籍になると、ちょっと事情が違ってきます。電子書籍は閲覧する権利だけを買っている形なので、本人が亡くなったら基本的には引き継げない。家族への引き継ぎが行えると利用規約に明記しているのはeBookJapanくらいです。動画サイトや音楽配信サイトも一身専属性のスタンスで、むしろそちらが普通の流れですね。