生き残りをかけた除雪に苦しめられて

 私は除雪に取りかかった。とりあえず入り口の周辺を除雪したが、小手先の除雪ではまったく状況の打開にならないので、一度テントにもどり行動着に着替えて本格的な除雪に着手した。とくに風下側のサイドの状況がひどくて、必死に掘り起こしても他の部分の除雪をするうちにすぐに埋まっていく。中途半端なことをしてもまったく歯が立たないため、テントの周り2メートルぐらいの幅で雪をどかすことにした。

 こうなると完全に生き残りをかけた除雪、サバイバル除雪である。

 地吹雪が吹き荒ぶなかでの重労働だが、危機を目の前に脳下垂体から大量のドーパミンが分泌されているのか、逆に私の集中力は異様に高まった。風雪が突き刺してくる中、テントを掘り出し、壁となった雪を切り崩し、空間を拡張して風の通り道を作ってやる。とりわけ入り口から氷河下部方面にかけての部分を徹底的に掘り下げることで、地吹雪がうまいこと抜けていき、これ以上、吹き溜まらないようになるはずである。自分は雪かきの天才なんじゃないかという気さえしてきて、途中からはイケイケで雪をかきまくった。だが、テントの周りを一周して最初の部分に戻ってみると、やはり完全に埋まって元通りになっており、やっぱり全然ダメだと愕然とした。

2回目のブリザードの後、2台あるソリのうち1台を掘り起こしたところ ©角幡唯介

ぶっ通しで7時間つづいた雪かき

 もう4時間ぶっつづけて除雪しているが、このざまだ。このままだとブリザードが収まるまで除雪しつづけなければならないが、さすがにそれは不可能である。暴風雪の中、あまりとりたくない選択肢だが、もはやテントを移し替えるしかなかった。

 テントの中で装備を袋にしまって、飛ばされないように細引きでひとまとめにして外に出した。ふたたび周りの雪をどかしてテントのアンカーを掘り起こし、テントをたたんだ。だが、たたんだテントに雪がどんどん降り積もっていき、その重みでテントが動かなくなる。早く動かさないと雪はどんどん積もっていくので、必死に雪をかく。かいた横から積もっていく。もう気が狂いそうだったが、なんとかテントを移動させて、地吹雪で隣にできた雪の高台のうえに運びあげた。橇はもう完全に雪の下に埋まってしており、テント設営のためのアンカーとしては使えないので、絶対に飛ばされないよう細心の注意で立てなければならない。この嵐でテントが飛ばされたら何もかも終わりだ。ポールをスリーブに通して専用のストラップで徐々にテンションをかけていく。風圧がすごいのでゆっくり立てないとテントは自立してくれない。なんとか安定させて荷物を運び入れ、ようやくなかに入って一息ついた。時計をみると7時間ぶっ通しで作業していたことが分かり、思わずため息が漏れた。

 翌日、ブリザードが止んだので、橇を掘り起こした。橇は2台とも完全に埋没していたが、ナパガヤという取っ手の先端だけがかろうじて10センチほど突きだしていたので、それを目印に掘り進めた。2時間半ほどで回収し、私と犬はふたたび氷河を登りはじめた。

©角幡唯介