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矢口蘭堂が35キロ歩いてたどりついた、臨時政府・立川防災合同庁舎9つの秘密

矢口蘭堂が35キロ歩いてたどりついた、臨時政府・立川防災合同庁舎9つの秘密

災害対策本部予備施設を徹底解説する

2017/11/12
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 写真の中央2つだけ他の椅子と異なるが、これが首相と官房長官が座るものだ。さらに首相の椅子(右)は、官房長官の椅子(左)と比べて、やや大きめと細かい違いがある。

(5)首相の控室はどんな雰囲気?

 さらにこの会議室の裏には、本部長控室。つまり、首相の控室がある。1998年に新館が完成してその3階に本部長室が移るまで、ここが本部長室として使われていたという。つまり、かつては首相の執務室だったのだ。保安上の理由により、新しい本部長室の取材は叶わなかったが、執務机と応接セットがあるといった雰囲気はそう変わらないだろう。

本部長控室の本部長(総理)席 ©石動竜仁

(6)いつでも使用可能なようにセッティング済み

 新館の2階には、オペレーションルームとして使われる事務室がある。巨大なディスプレイが設置されている有明のオペレーションルームとは異なり、机とパソコンが並ぶこちらはオフィスに近い。

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セッティング済みのオペレーションルーム ©石動竜仁

 整然と並べられた机の上には、参集した要員が使用するノートPCや電話があらかじめ用意されている。これらのPCはOSも最新の状態に保たれ、要員が予備施設に参集しても、すぐに使えるようになっているという。

 また、新館1階には記者会見室も設けられてあり、記者用の椅子もセッティング済みとなっている。

記者会見室 ©石動竜仁

 この他、通信設備を備えた通信室、対策本部要員用の仮眠室や、食料の備蓄倉庫、停電時の自家発電設備などが備えられており、ここが災害に備えた施設であることが窺える。

(7)実は大変だった屋上への移動手段

 もっとも、首相が寝泊まり出来る公邸を併設した首相官邸と異なり、予備施設には公邸としての設備は備わっていない。そのため、首相が予備施設で寝起きすることになると、本部長室のソファーなりで寝てもらうことになるかもしれないという。

 また、劇中、矢口蘭堂官房副長官と赤坂総理補佐官が新館屋上で会話するシーンが登場するが、実際には屋上に出るにはベランダに出てタラップを登っていく方法しかない。スーツを着た2人がわざわざこのタラップを登って屋上に上がる光景は、想像するとちょっとシュールだ。

 なお、ロケの際は撮影用のリフトが持ち込まれていて、それで役者や撮影班は屋上まで上がったという。

屋上に出るにはここを登るしかない ©石動竜仁

 前述したように、災害対策本部予備施設が使われる事態となると、永田町・霞が関といった都心の官庁街は壊滅的な被害を被っていると思われ、全閣僚を本部員とする緊急災害対策本部が立ち上がっているはずである。そうなると、政府機能の中枢は必然的に立川周辺に移ることになるが、それぞれが大臣を務めている官庁の仕事はどうなるのだろうか?

 東日本大震災以降、政府の災害対策本部以外にも、各省庁の本庁舎が使用不能となった際の代替拠点施設を設ける動きが起きている。しかし、省庁の既存の施設を用いているため、省庁の「モノ持ち具合」によってその内容には大きな差がある。例えば総務省消防庁は立川市内にある自治大学校といった大きな施設を代替施設に定めているが、環境省は皇居外苑や新宿御苑の管理事務所といった、小さい上に立川から離れている施設を指定せざるを得ない状況だ。