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古森 義久
2016/02/27

緊迫する南シナ海
ミサイル配備は尖閣攻略の布石?

source : 週刊文春 2016年3月3日号

genre : ニュース, 国際, 政治

ウッディー島に翻る中国国旗
Photo:Kyodo

 中国の海洋での軍事攻勢は留まるところを知らないようだ。南シナ海でベトナムと領有権を争うパラセル(中国名・西沙)諸島への新たな地対空ミサイルの配備はアメリカの激しい抗議と、東南アジア諸国の一斉の反発を招いた。

 米国防総省の発表では中国軍はパラセル諸島でも最大のウッディー(永興)島に2月3日から14日までの間に射程200キロのHQ-9ミサイル2個隊を新配備した。同1個隊は運搬車両にレーダーや発射装置とともにミサイル4基を搭載し、航空機だけでなく飛来するミサイルを撃破する能力を有するという。

 オバマ政権は今回の中国の動きは習近平国家主席の昨年9月の「南シナ海を軍事化しない」という言明にも違反すると抗議する。とりわけオバマ大統領が東南アジア諸国の首脳をカリフォルニア州に招いての会議の開催中に表面化したことも衝撃を与えた。

 南シナ海ではスプラトリー(南沙)諸島がもっぱら緊張を高め、国際的注視を集めていた。中国側が同諸島での埋め立てや飛行場建設を強引に進めていたためだが、パラセルはそこから北のベトナム寄りに位置する。南シナ海全体でも初めての高性能兵器の陸上配備は、中国側の巧みな陽動作戦とも映る。

 中国は「米軍の南シナ海での『航行の自由』と称した軍事攻勢への防御措置だ」と反論する。だが米側ではウッディー島で中国が戦闘機の配備や格納庫の増強などをすでに始めていた事実を指摘して、米側の動きにかかわらず企図していた作戦だと主張する。

 米国の専門家たちは今回の動きを中国の南シナ海での軍事覇権確立の長期的作戦の一歩とみる。それは全世界の海洋輸送の3割余が通る南シナ海が「中国の湖」となる懸念に他ならない。

 さらに深刻なのは中国がこの種の軍事攻勢の矛先を東シナ海の尖閣諸島にも向ける可能性である。ブッシュ前政権の高官で現ハドソン研究所の副所長ルイス・リビー氏は「中国側には南シナ海に国際的な関心を集中させ、尖閣諸島に突然、軍事攻撃をかけるシナリオがある」という警告の論文(共著)を発表している。中国が日本と軍事衝突し、国際調停で領有権の主張を押し通そうと企図する可能性に、留意すべきだろう。