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木村 正人
2017/11/13

カタルーニャ問題 “インテリ”プチデモン氏率いる独立派の戦略

EUを巻き込んで問題の解決を図るプチデモン氏 ©共同通信社

 サッカーのFCバルセロナやサグラダ・ファミリアで日本人観光客にも人気のスペインのカタルーニャ自治州で独立問題が火を噴いている。

 カタルーニャは独自の言語と文化を持つネーション(民族)だが、スペイン王国に支配されてきた歴史を持つ。

 独立派の心に深く刻まれるのはフランコ独裁下(1939~75年)の暗い記憶だ。公の場でカタルーニャ語を話すことを禁止され、反政府活動に関わった者は処刑された。フランコの死後、ようやく自治権を取り戻し、民主化されたスペインで中央政府と共存共栄を図ってきたが、フランコの流れをくむ国民党が2000年の選挙で圧勝すると状況が一変。再中央集権化に突き進む国民党に反発し、独立の気運が盛り上がった。

 今年10月には、独立の是非を問う住民投票が行われ、賛成票が9割を占め、プチデモン州首相(54)は独立を宣言。これに対して中央政府は、同州の自治権を剥奪し、プチデモン氏らを罷免、国家反逆罪で訴追する強硬策に打って出た。プチデモン氏ら5人の閣僚は、EU本部のあるベルギーのブリュッセルに脱出し、11月5日、ベルギー警察に出頭した。

 非暴力主義の独立派を率いるプチデモン氏は、大学でカタルーニャ語の古典を学んだインテリ。ジャーナリスト出身で、SNSを巧みに活用する「ゲリラ的」政治家だ。

 一般的に独立派は、統一派から「土着主義のナショナリズム」と批判されるが、筆者が取材した印象はむしろ逆で、統一派よりも独立派のデモ参加者のほうが、英語を話せる人が明らかに多い。

 それもそのはずで、地中海貿易の拠点であったカタルーニャは、今もスペインの輸出の4分の1超を占める国際経済都市だ。スペインに進出する日系企業は232社とされ、この地域に拠点を置くのは89社と最多。中央政府は1600社が州外に移転したと喧伝するが、国内企業が登記を移しただけで、日系企業をはじめ外資系は静観する。

 今のところバルセロナは観光客でにぎわい、独立問題の緊張を全く感じさせない。だが、12月の州議会選では再び独立派が圧勝する公算が高く、強権的な中央政府の出方次第でどうなるか、予断を許さない。