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森岡 英樹
2017/11/14

異例の人事、どちらが正解? FRB議長の退任と日銀総裁の再任

パウエル氏指名を受け株価は上昇 ©共同通信社

 トランプ米大統領は2日、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にジェローム・パウエル氏(64)を指名した。現職のFRB理事からの昇格で、エコノミスト以外からの起用は実に40年ぶり。議会承認を経て来年2月に正式就任する。

「最大の決め手は、パウエル氏が共和党員で、政権の意向を汲める調整型の人物だということだろう」(金融関係者)

 名門プリンストン大卒で、ジョージタウン大で法学士を取得したパウエル氏は、投資銀行ディロン・リードの上席役員を経て、ブッシュ(父)政権で財務次官に就任。その後、政界に太いパイプを持つ投資ファンドで、世界三大プライベート・エクイティのひとつカーライル・グループの共同経営者に転じ、2012年、FRB理事に就いた金融エリートだ。

 メリーランド州の自宅からワシントンのFRBオフィスまで自転車通勤するほど自転車好きで知られる。

 現職のジャネット・イエレン氏は1期での退任となり、議長が再任されなかったのは約40年ぶりの事態だ。

「イエレン氏は、大規模緩和を縮小しながら金利を上げ、景気を冷やさないという見事な手腕を見せた。トランプ大統領にとっては、イエレン氏でもよかったが、唯一にして最大の欠点は、オバマ前大統領に指名されたこと」(同前)

 ただ、イエレン氏にとっては、異例の退任は幸せな引き際になるかもしれない。

「これからのアメリカ経済は前途多難。トランプ氏という最大のリスク要因を抱え、掲げている目玉の経済政策は、議会でいまだに法案として1本も成立していない。利上げや緩和縮小のテンポが遅れれば米国の資産バブルは膨張し、崩壊後の対応はそれだけ難しくなる」(エコノミスト)

 一方、イエレン氏とは対照的に再任観測が強まっているのが、来年4月に任期満了を迎える黒田東彦日銀総裁(73)だ。再任されて2期目に入る日銀総裁は、昭和30年代の山際正道氏まで遡る。

「ただ、目標とした物価上昇が果たせないまま5年が経過しようとしており、今後は金融緩和の余地も限られる。黒田氏も本音では今期で退きたいはず」(日銀関係者)

 黒田総裁、逃げるは恥だが役に立つ、ですよ。